日本の為替レートの動向と決定要因に関する分析
2025年2月27日
宮本亘*1
要旨
本稿では、2021 年以降の対米ドルの円安を中心に、ドル円為替レートの決定要因を金利に着目して考察する。最初に、日次データを使った時系列分析と反事実分析を利用して、米国の金融政策がドル円為替レートにどのように影響を与えるかを検証する。推計の結果、米国金利の一時的な上昇が、ドル高・円安を引き起こすことが示される。また、反事実分析の結果は、今後の米国の金融政策の方向性の変化が、ドル円為替レートをどちらの方向にも大幅に変化させうることを示唆する。次に、要因分解を行い、2021年1月から2023年9月半ばにかけての約32%の円安のうち、約24%が米国金利の影響によるものであることが示される。一方で、他の通貨では、同期間の米国金利の説明力はドル円為替レートほど高くなく、ドル円為替レートも他の期間においては米国金利の説明力が常に高いわけではないことが確認される。この結果は、金利以外の要素の役割や、他の通貨との違いを理解することが重要であることを示唆する。
本稿は、2023年11月に開催された東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第10回共催コンファレンス「国際経済環境の変化と日本経済」における発表内容を論文にしたものである。参加者の方々、特に討論者であった加納隆教授には多くの有益なコメントを頂いた。また、発表の機会を与えて頂いた東京大学・日本銀行の関係者の方々、特に福永一郎氏、法眼吉彦氏、渡辺努教授にはここで感謝の意を表したい。
- *1香港大学
日本銀行から:
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