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原材料高を起点とした賃金から物価への二次的波及:
DSGEモデルによる実証分析

2025年6月19日
安達孔*1
加藤直也*2

要旨

本稿は、原材料高に伴う物価上昇が賃金に波及し、それが再び物価にフィードバックする効果(「二次的波及効果」)について、原材料投入構造の近い日本と欧州を対象にDSGEモデルによる実証分析を行う。分析結果によると、原材料費上昇の価格転嫁を捉えた一次効果は、欧州よりも日本の方が緩慢であるほか、賃金を通じた二次的波及効果は、日欧ともに緩やかだが持続的であることが分かる。また、2020年以降の物価上昇局面では、日欧双方において、原材料高の一次効果が物価上昇の主因となった一方、二次的波及効果は物価上昇の持続性を高める役割を果たしていた可能性が示唆される。さらに、近年の日本において、賃金硬直性の変化等が二次的波及効果を強めた可能性を指摘する。

JEL 分類番号
E17、E31、J30

キーワード
賃金、物価、二次的波及効果、DSGEモデル

本稿の作成に当たっては、青木浩介氏、大高一樹氏、開発壮平氏、川本卓司氏、黒住卓司氏、佐々木貴俊氏、陣内了氏、須合智広氏、高橋悠輔氏、福永一郎氏から有益なコメントを頂いた。なお、本稿に示されている意見は、筆者達個人に属し、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りはすべて筆者達個人に属する。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : kou.adachi@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : naoya.katou@boj.or.jp

日本銀行から

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