デジタルアイデンティティと取引・決済
2025年6月30日
小島怜
鳩貝淳一郎※
要旨
経済のデジタル化が進んだ現代では、インターネットを介してサービスを利用するシーンがますます増えている。事業者がユーザーに対してサービスを届けるには、属性情報などから構成されるアイデンティティをデジタルな形式で適切に用いることが必要である。
近年、こうしたデジタルアイデンティティの管理が、少数のメジャーなサービス事業者に担われるようになってきていることから、プライバシー、サービス利用の継続性、データに対するコントロールといった観点から、リスクやデメリットも指摘されている。こうした状況下で、特定の主体への依存を避ける形でアイデンティティを構成し、ユーザーが自身でコントロールする「自己主権型アイデンティティ」の考え方が、注目を集めている。
本稿では、自己主権型アイデンティティに関連した要素技術である「検証可能クレデンシャル」や「分散型識別子」などを説明し、これらを活用した社会実装の試みを紹介した上で、こうしたアイデンティティのあり方が、経済活動の中でも取引や決済の領域にとって重要であり、経済取引や決済の将来像を検討する際にも示唆がある旨を示す。
- 日本銀行決済機構局 E-mail : junichirou.hatogai@boj.or.jp
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