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内外投資ファンドのプレゼンス拡大を勘案した探索的シナリオ分析

2025年8月22日
古仲裕貴*1
中村史一*2
丸山聡崇*3

要旨

近年、ノンバンク部門のプレゼンスが高まっていることを背景として、ノンバンク部門を明示的に勘案したストレステストや関連した分析が各国中央銀行で試行的に実施されている。本稿では、金融システムレポート(2025年4月号)に掲載された探索的分析(内外の投資ファンドによりストレスが増幅された場合の影響についての試行的な分析)について、定量的なシナリオの設定方法を詳しく解説する。当該分析で設定したシナリオでは、まず、内外の金融市場や実体経済にリーマンショックと同規模の大幅な調整が生じたと想定したうえで、同時点において、別途、オープンエンド型ファンドを中心とする投資ファンドによる保有有価証券の売却が生じ、そのもとで、1.資産価格の一段の下落、2.資産価格下落を通じた実体経済の一段の減速、3.本邦金融機関の海外ファンド向け投融資に係る損失の3つの経路においてストレスが追加的に生じることを想定する。結果は以下の通りである。まず、シミュレーション終期(2027年度末、シミュレーション始期から3年後)の自己資本比率への増幅効果をみると、減少幅が大きい国際統一基準行で-1%pt程度であった。増幅効果の内訳をみると、内外の実体経済悪化による信用コストの増加が自己資本比率を業態横断的に押し下げるほか、資産価格下落や海外ファンド向け投融資の毀損も、国際統一基準行を中心に押し下げ方向で作用する。また、ストレス発生直後の短期的な増幅効果をみると、リスク性資産の価格下落により有価証券評価損益が悪化する。もっとも、オープンエンド型ファンドやヘッジファンドなど投資ファンドを含むノンバンクの投資行動、あるいはその金融システム全体への波及効果に関するデータや研究蓄積は、現時点では限定的であり、本稿で解説した分析結果は一定の仮定を設けて試行的に試算したものである。このため、結果については、幅を持ってみる必要がある。

JEL 分類番号
G12、G15、G17、G21、G23

キーワード
グローバルな投資ファンド、ストレステスト、価格感応度
  1. *1日本銀行金融機構局(現・総務人事局) E-mail : yuuki.konaka@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融機構局 E-mail : fumitaka.nakamura@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融機構局 E-mail : toshitaka.maruyama@boj.or.jp

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