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日本銀行情報サービス局 総務課総務企画グループによる広報イベントの仕事 大学生のための日銀グランプリ~金融教育の機会として(2023年3月24日掲載)

2022年11月、大学生を対象とした金融・経済分野の論文・プレゼンテーションコンテスト「第18回 日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」の決勝大会が、日本銀行本店で開催されました。事前の告知から100件を超える論文の受け付けとその審査、決勝大会の実施、結果の告知まで一連の業務を担ってきたのは情報サービス局の職員です。このコンテストの円滑な実施のために職員がさまざまな工夫や配慮を尽くしていた背景には、日本の将来を担う大学生に金融・経済に関心を持ってもらえる機会を提供したいという、職員の共通した思いが込められていました。


日本の未来を支える大学生の金融・経済への理解を促す機会

日銀グランプリのポスターの写真。

「日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」は2022年度で18回目を迎えた、大学生を対象とする金融・経済分野の論文・プレゼンテーションコンテストです。応募の対応から論文の審査、決勝大会までの流れを中心となって支えるのは情報サービス局の職員ですが、局室を超えて合計20名近くの職員がその職務を担う一大イベントです。しかも、今回は、コロナ禍に開催することとなったこともあり、その対応は複雑なものとなりました。今回、日銀グランプリの運営を統括する立場の総務課長・横堀裕二さんは開催の経緯や背景をこう語ります。

「日本銀行は、物価の安定を通じた国民経済の健全な発展への貢献と金融システムの安定性確保を責務としています。こうした役割を果たす上では、国民の皆さんに日本銀行の役割等について知っていただくことがとても大切です。日銀グランプリは日本銀行に関心を持っていただく機会、そして、日本の将来を担う大学生に金融・経済の現状と将来について自分たちの問題として考えてもらうきっかけになってほしいとの思いから2005年度にスタートしました。例年100件以上の応募があり、2022年度は113件。論文応募件数は累計で、間もなく2,000件に到達する勢いがあり、このように定着してきたことをうれしく思っています」

コンテストの課題は「わが国の金融・経済への提言」。論文の審査を経て11月23日に行われた決勝大会には5チームが進み、各15分のプレゼンテーションと審査員との質疑応答が行われました。その結果、論文と合わせた総合的な評価から、東京経済大学経済学部チームが最優秀賞に輝いた他、優秀賞2チーム、敢闘賞2チームが選ばれました。

「個人ではなくチームでの参加が要件なのは、仲間と一つの問題に取り組み、多角的な考え方で議論をしてほしいとの思いからです。今回の5チームはいずれも、熱意あふれるプレゼンテーションで感銘を受けました。丁寧なリサーチや関係各省庁、企業へのヒアリングなど、準備に時間をかけていたことも心強く思いました。最優秀賞は一つのチームになってしまいますが、100を超える応募の中から選ばれ、決勝大会まで進んだことは素晴らしいこと。しかも、審査員からの質問にも皆さん堂々と対応していて驚きました。今後の社会人生活の門出に向けて大きな自信にしていただければと思います」

  • 会場全体を写した写真。

    プレゼンテーション会場

  • 学生がプレゼンテーションを行っている様子の写真。

    決勝大会では、各15分のプレゼンテーションと審査員との質疑応答が行われた。

さまざまな配慮を重ねて行われたコロナ禍での決勝大会

例年、応募開始の5月に向け、前年度の2月から全体のスケジュールを組むなどの準備がスタートします。企画役補佐の川口英樹さんは2020年度の日銀グランプリから運営に携わってきましたが、最初に直面したのがコロナ禍という大きな難題だったと振り返ります。

「当初はコンテストの中止も想定されましたが、学生さんたちのためにも何とか開催をとの思いで検討を重ねました。消毒の徹底等の基本的な対応に加え、密を回避するために、プレゼンテーション会場と学生控室とを分け、オンラインでつないだりするなどの対応を施しました。前例がなく苦労は多かったものの、余計な心配をせずに気持ち良く発表に専念してもらうことがなによりも大事だと思っていました」

プレゼンテーションコンテストであることから、その熱量や臨場感が損なわれないようにするための工夫も凝らされました。プレゼンテーション会場のカメラや学生控室のモニター数を増やすなど、この3年間にはさまざまな創意工夫が重ねられました。

「情報サービス局が主体のコンテストではありますが、各所をつなぐオンラインの設定はシステム情報局、さまざまな機材調達は文書局など、多数の関係各局の協力に支えられており、日銀グランプリは弊行が一丸となった取り組みになっています」

万が一のケースも想定しつつ進められた入念な準備

川口さん同様、3年間にわたるコロナ禍に苦慮しつつ、前年度から始まるポスター等の制作、応募の受け付け等の各種実務を担ってきたのは九谷田由希さんです。

「応募開始は5月、締め切りは9月末と募集期間には余裕を設けているものの、応募の多くは締め切り間際に集中します。そのため、10月入り後の対応は大変ですが、学生さんたちはぎりぎりまで推敲を重ねているのでしょう」

論文受け付け後は11月下旬の決勝大会開催までの間、コロナ禍の影響をふまえながら決勝大会当日のシミュレーションを重ねます。当日のスケジュールは分単位で人員の動きが細かく決められているため、さまざまな状況に応じた入念なチェックを行います。

「さまざまな検証を経て、決勝大会前日に会場のセッティングを終了した後、スケジュールに沿って流れを追い、最終確認を進めます。プレゼンテーション資料が映らない、学生さんが来られない、遅刻するといったトラブルも想定していました。このため、多少のトラブルが起きても慌てることなく対応でき、今年も無事に決勝大会を終えることができました。当日は控室からプレゼンテーション会場へと移動する学生さんの案内役も務めたのですが、行きはとても緊張していらして、終わった後は安堵の表情になるのがとても印象的でしたね」

決勝大会の模様や参加チームの論文をこの2月に日本銀行のウェブサイトに掲載し、2022年度の業務は一段落しましたが、既に次の第19回日銀グランプリの準備が始まっています。

真摯に向き合う論文審査と参加学生へのエール

川口さんたちとともに、論文の予選審査に携わったエピソードを語るのは企画役の酒井洋治さんです。

「論文の審査は複数人で行います。他人の評価にひきずられないようにするため、まずは各人が全ての論文を読み、点数をつけていきました。現状の把握や分析ができているか、提言が論理性や説得性を持っているか、さらにはその提言の実効性が筋立てて書けているか、というのが大きな基準。それぞれの結果を持ち寄って話し合いますが、意見が異なることもあり、議論を重ねながら選考を進めます」

予選審査が進むと決勝大会に進む5チームが決まります。決勝大会当日における酒井さんの役目の一つは、学生控室でのアテンドでした。

「学生さんにスケジュールや待機場所等の一連の流れを案内するのが私の仕事の一つでしたが、最初は皆、硬い面持ちなので、少しでも安心してもらうためにも丁寧な説明を心掛けました。本番前、プレゼンテーション会場でのリハーサルにも立ち会い、パソコンの操作体験では留意点を伝えるなど、できるだけコミュニケーションを取って和んでもらうよう努めました」

本番前のリハーサルでは、パソコン機器の操作等、留意点を学生に説明。

  • スタッフがパソコンの操作を説明している写真。
  • スクリーンに投影されたプレゼン資料を見ながらリハーサルに臨む学生の写真。

臨機応変な対応が求められた決勝大会での司会進行

司会進行の様子の写真。

司会進行は臨機応変な対応が求められる。

九谷田さんとともに開催前の事前準備を手掛け、決勝大会当日は司会という大役を担ったのは入行3年目の関野那々子さんです。

「何度もリハーサルは行いましたが、当日は進行の時間に徐々にずれが生じてきました。柔軟な対応を心掛けましたが、司会は初めてのことなので、学生さんたちと同じくらい緊張していたかもしれません」

一番時間をかけて準備したのは、学生たちがプレゼンテーションを終えた後、審査員方と行う質疑応答の時間でした。

「どなたから指名するか、ご発言に言い残しはないか、逐次様子を確認しながら進めていました。今年は慣れている審査員方に助けていただきましたが(審査員長を務めた若田部副総裁は、今年で日銀グランプリ決勝大会は5回目の経験)、来年も機会をいただけるなら、シミュレーションを重ねてもう少しうまくリードできればと思っています」

参加者の名前、大学や学部の名称にも注意を払ったと関野さんは話します。

「ささいなミスで皆さんのお気持ちに影響することがないように、と気を配りました。自分の学生時代を振り返れば授業や課題だけでも忙しかったのに、論文を作成し、さらに決勝大会進出チームはプレゼンテーション資料を準備する必要があり、とても大変だったと思います。チームの結束力が感じられるプレゼンテーションには感動しました」

学生たちのチャレンジに懐深い熱意で応える審査員とチームを作ることの意義深さ

学生にエールを送る日銀スタッフの写真。

過去の日銀グランプリ出場経験を生かし、緊張した面持ちの学生へエールを送る。

予選審査員を務めつつ、日銀グランプリ運営の実務全般を仕切ってきた企画役の仙波尭さんは、決勝審査員方の対応について語ります。

「決勝大会の審査員は、弊行副総裁、審議委員2名と外部の方が2名の計5名。外部審査員の方々は、金融・経済、企業経営、ジャーナリズムなど広い分野で知見をお持ちの方々を毎年お招きしますが、学生さんと直接触れ合う機会が少ない方が多いせいか、新鮮な思いで受け止めてくださっているように感じます。論文を事前に熟読され、質疑応答では手綱を緩めることなく、とても鋭い質問や熱いコメントを頂戴するのがありがたいですね。学生さんにとっては、学ぶことの多いひとときだと思います」

発表のテーマは年々幅が広がり、少子高齢化や年金問題、環境問題、地域通貨といった世相を反映した内容が増えているとか。マッチングアプリを使うなど身近なツールを使うアイデアも多く、多彩な観点が面白いと話す仙波さんは実は、第1回日銀グランプリで優秀賞を受賞したチームの一員でした。

「自分の時代と比べると今の学生さんはプレゼンテーションが上手で、洗練された印象がありますね。限られた時間を有効に使うチームが多く、資料等も分かりやすい。こうした中、参加者側と運営者側、両者の見地から思うのは、チームを組むことの意義深さ。学生時代、日銀グランプリに応募した際には、意見が割れる中、何時間もかけて議論を重ねることで人間関係が培われたほか、仲間の発想に刺激を受けて自分自身の考えもブラッシュアップされていきました。こうした日々は得がたい体験でした。実際、日銀グランプリでチームを組んだ2名は自分にとって今も大切な存在です。また、今回運営側でも日銀グランプリに携わりましたが、ここでもチームを組み、一つの大会を安全に盛り上げるために、時間を惜しまずさまざまな準備を行いました。共通するのは、少しでも良いものを作ろうと切磋琢磨することが、非常に得難い経験になるということです」


日銀グランプリに携わる職員の話に共通していたのは、学生たちの熱意を陰ながら支えたいという真摯な思いでした。総務課長の横堀裕二さんは、こう語ります。

「日銀グランプリで発表される論文、プレゼンテーションは、学生ならではの金融・経済に関する視点や考え方、問題意識に触れるという点において、その世界を熟知した方にも新たな刺激を与えてくれると思います」

入賞者の論文や当日の様子をまとめた動画は日本銀行のウェブサイトでご覧になれますのでぜひ、アクセスしてみてください。

(肩書などは2022年12月上旬時点の情報をもとに記載)