質問国庫金事務のデジタル化とは何ですか?
教えて!にちぎん
日本銀行では、(1)国民から国への資金の受入れ(税金や保険料など)、(2)国から国民への資金の支払い(年金や公共事業費など)のほか、(3)そうした資金の受払を集計して帳簿に記録するといった国庫金事務を行っています。これらの事務は紙で処理されていましたが、日本銀行では、政府の「電子政府構想」にも呼応しつつ、2000年(平成12年)3月から国庫金に関する事務の電子化に取り組み始め、システムを用いた電子的な処理に段階的に置き換えることで、国民、金融機関、官庁、日本銀行を結ぶ国庫金の流れ全体をデジタル化することを進めてきました。これを、国庫金事務の電子化プロジェクトといいます。
こうした取り組みが実を結び、国から国民への資金の支払いでは、年金や国税の還付金と様々な支払いにかかる一連の事務手続きが、紙や人手を介さずにシステムで処理できるようになり、ほぼデジタル化が完了しています。
また、国民から国への資金の受入れでは、インターネットバンキング等を通じて預金口座から資金を払い出したり、クレジットカードで支払うことで、国民の皆さんが税金や保険料等の支払いを完了させるキャッシュレス納付が可能となり、都合の良い時間に自宅やオフィスから、簡単な操作で納付の手続を終えることができます。もっとも、こうしたメリットがあるキャッシュレス納付ですが、キャッシュレス化の進展は途上にあり、普及の余地はまだまだあります。
そのためには、国民の皆さんに使い勝手の良さを実感していただけるよう、国庫金の納付に関わる多様な関係者がキャッシュレス納付の利便性を認識し、広く周知・広報していく必要があります。日本銀行では、行政のデジタル化の加速や非対面手続への関心が高まる中、国税当局や金融機関、税理士会、納付者団体など官民の多様な関係者が連携して、キャッシュレス納付の普及に取り組む活動のサポートを行っています。
国庫金事務の電子化プロジェクトの歩み
2001年(平成13年) | 国税還付金振込のMT化 | 全国の税務署における国税還付金の振込情報を国税庁が集約し、MT(磁気テープ)で日本銀行に送付。MTは東京銀行協会で分割された後、金融機関に届けられ、金融機関は受取人口座に振込。 |
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2003年(平成15年) | 歳出金振込のオンライン化 | 公共事業費、失業給付金等の歳出金にかかる振込情報を財務省会計センターが集約し、オンラインで日本銀行に送信。振込情報は全銀システム経由で金融機関に届けられ、金融機関は受取人口座に振込。 |
2004年(平成16年) | 歳入金等電子納付の実現 | 税金や国民年金保険料等を、インターネットバンキングやATMから納付。領収済の情報は「マルチペイメントネットワーク(MPN)」を通じて官庁と日本銀行に送信される。 |
記帳・振替事務の電子化 | 日本銀行の本支店・代理店を「統合国庫記帳システム」のネットワークで結び、取引先である官庁の口座への記帳や口座間の振替を自動処理化。 | |
2005年(平成17年) | 保管金・供託金、財政融資資金の受払電子化 | 国の保管金・供託金といった受払双方向の事務が発生する取引につき、受入れは電子納付、支払いは歳出金振込オンライン化のスキームを活用して電子化。 |
2006年(平成18年) | 国税還付金振込のオンライン化 | 全国の税務署における国税還付金の振込情報を国税庁が集約し、オンラインで日本銀行に送信。振込情報は全銀システム経由で金融機関に届けられ、金融機関は受取人口座に振込。 |
2013年(平成25年) | 厚生年金等振込のオンライン化 | 厚生年金等の振込情報に関する日本銀行と振込依頼先金融機関との授受方法について、MT(磁気テープ)からオンラインに変更。振込情報は全銀システム経由で金融機関に届けられ、金融機関は受取人口座に振込。 |
2020年(令和2年) | 国税還付金振込のオンライン化範囲拡大 | 全国の税務署における国税還付金の送金請求等(従来は書面請求)を国税庁が集約し、オンラインで日本銀行に送信。明細情報は日本銀行を経由してオンラインで金融機関に送信。 |
参考
- 国庫金事務のデジタル化
- フォーカス BOJ「日本銀行業務局 総務課国庫業務企画グループの仕事」(広報誌「にちぎん67号(2021年秋号)」)
- 国庫事務の更なる効率化に向けて (2017年7月)