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「国庫金事務の電子化」に向けた日本銀行の取り組み

2006年10月
日本銀行業務局

日本銀行は、国税の受入や年金の支払いなど、国庫金の受払に関する事務を行っています。国庫金事務には、国民、金融機関、官庁、日本銀行といった関係者間の紙による情報の受渡しや手作業が多く残っていたため、国民は、金融機関の窓口に出向く必要があり、関係機関の事務も手間のかかるものでした。このため、最新の情報技術(IT)を活用して事務処理の流れを電子化し、ペーパーレス化、ネットワーク化、自動処理(Straight-Through Processing:STP)化等を図ることが急務でした。

日本銀行では、こうした事態に対処するため、平成12年(2000年)3月、政府の「電子政府構想」にも呼応しつつ、国庫金事務の電子化に取り組み始めました(国庫金事務の電子化は、電子政府の中の「お金の受け払い」に関する部分を支える役割を担っています)。それ以降、下表に掲げた様々な電子化プロジェクトを実現してきました。

国庫金事務電子化の各プロジェクトの概要

表 国庫金事務電子化の各プロジェクトの概要
平成13年
(2001年)
国税還付金振込のMT化 全国の税務署における国税還付金の振込情報を国税庁が集約し、MT(磁気テープ)で日本銀行に送付。MTは東京銀行協会で分割された後、金融機関に届けられ、金融機関は受取人口座に振込。
平成15年
(2003年)
歳出金振込のオンライン化 公共事業費、失業給付金等の歳出金にかかる振込情報を財務省会計センターが集約し、オンラインで日本銀行に送信。振込情報は全銀システム経由(全銀システムとの接続は平成7年(1995年)に完了)で金融機関に届けられ、金融機関は受取人口座に振込。
平成16年
(2004年)
歳入金等電子納付の実現 税金や国民年金保険料等を、インターネットバンキングやATMから納付。領収済の情報は「マルチペイメントネットワーク(MPN)」を通じて官庁と日本銀行に送信される。
  記帳・振替事務の電子化 日本銀行の本支店・代理店を「統合国庫記帳システム」のネットワークで結び、取引先である官庁の口座への記帳や口座間の振替を自動処理化。
平成17年
(2005年)
保管金・供託金、財政融資資金の受払電子化 国の保管金・供託金といった受払双方向の事務が発生する取引につき、受入は電子納付、支払は歳出金振込オンライン化のスキームを活用して電子化。
平成18年
(2006年)
国税還付金振込のオンライン化 全国の税務署における国税還付金の振込情報を国税庁が集約し、オンラインで日本銀行に送信。振込情報は全銀システム経由で金融機関に届けられ、金融機関は受取人口座に振込。

この結果、これまでに国庫金事務の主要な領域においてインフラが整備され、従来の「紙」から「磁気媒体(磁気テープ等)」「オンライン」に至る電子化の流れが現実のものとなっています。

こうした電子化の進展に伴い、以下のような効果が実現しつつあります。

国民の利便性向上

ITを活用して事務が迅速化されることにより、公共事業費や保管金・供託金等の国庫金が従来より早く金融機関の口座に振り込まれる。
国税、各種保険料、行政手数料などの国庫金が、インターネットバンキングやATMを利用していつでもどこでも支払える。

関係機関(官庁、金融機関、日本銀行)の事務効率化

ペーパーレス化による手作業負担の減少。
金融機関の国庫金事務を民間の事務と極力共通化。

事務効率化のメリットの一部は、国民の利便性向上には直接結びつくものではありませんが、関係機関の事務効率化は、社会全体のコストの低下すなわち国民全体のメリットにつながります。
一方で、電子納付の利用はごくわずかに止まり効果が十分に発揮されていない部分もあるため、日本銀行は官庁、金融機関などの関係機関と連携しつつ、認知度の向上や国民に身近なチャネルの整備、使い勝手の向上など、一層の利用促進に努めています。そうした中、平成18年(2006年)4月より、日本銀行では、電子納付事務に関し金融機関に支払っている手数料(歳入代理店手数料)を従来の1.52倍に引上げました。これは、同事務の実態を踏まえ、「事務に必要なコストを賄う」との考え方に基づき改定したものですが、結果的に金融機関による電子納付の取り組み姿勢前傾化、チャネル整備等につながり、電子納付の利用促進に寄与することを期待しています。

参考