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決済と決済システムを理解するためのキーポイント《基礎編》テーマ7.決済の実行

この章のキーワード:
「システミック・リスク」、「ファイナリティーのある決済」、「決済の安全性と効率性」、「RTGS(即時グロス決済)」、「時点ネット決済」
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銀行間決済とシステミック・リスク

「あるところで発生した決済不能が次々と広がって世の中に混乱を及ぼす可能性」のことを「システミック・リスク」と呼びます。これを削減するためにポイントとなるのが、銀行間決済の安全性です。なぜなら、銀行は毎日顧客や自分自身のために巨額の決済をしていますが、その銀行同士の決済は連鎖の関係が複雑に入り組んでいるので、決済不能が生じた場合の波及が大規模かつ広範囲になる心配が大きいからです。

決済不能がドミノ倒しのように連鎖して、それに伴う損失が世の中に拡散してしまう可能性がシステミックリスクです。

安全な決済のための条件

システミック・リスクを削減し、安全な銀行間決済を行うためには、日中、次々と、期待どおりの金額が確実に手に入るような決済(これをファイナリティーのある決済と呼びます)を行っていかなければなりません。そのためには、(1)提供者が倒産して紙屑になったりしない安全な決済手段を利用する、(2)一旦実行したら取消さないというルールで決済する、(3)取引のつど1件1件迅速に決済する、という3項目が必要です。

理想と現実とのあいだ

しかし、安全な決済のための3項目は、あくまでも理想を示したものにすぎません。実際には、効率性を高める等いろいろな事情から、安全な決済のための3項目を実現していない場合があるのです。

例えば、安全な決済のための3項目の1つである「取引のつど1件1件迅速に決済する」という点は、まだ完全に実現していません。ただ、近年、各国で、銀行が中央銀行当座預金の振替で決済を行う方法について、「RTGS(即時グロス決済)」が採用されるという重要な進展が見られています。

RTGSとは、中央銀行に当座預金をもつ銀行が中央銀行に振替を指示したとき、「中央銀行が振替の指示を受取り次第直ちに(=即時)、他の振替とネッティングせずに(=グロス)その振替を実行する(=決済)」という決済方式です。

RTGSとはReal Time Gross Settlementの頭文字を取ったものです。

時点ネット決済とその問題点

これに対して、RTGSと対照的な決済方法は、「時点ネット決済」です。RTGSが導入される以前は、中央銀行では「時点ネット決済」という方式で銀行間の決済が行われていました。「時点ネット決済」とは、銀行間のたくさんの取引を差引きして各銀行の差引き支払い額や差引き受取り額(これを負け額、勝ち額と呼びます)を算出し、全ての銀行が負け額・勝ち額を決済できたら、全ての銀行の間における全ての取引が決済できたことにしよう(これを「ペイメント・ネッティング」といいます)、また、このような決済を毎日一定の時刻だけで行おう、という決済の方式です。

「時点ネット決済」には「ネッティング(ペイメント・ネッティング)」が組み込まれているので、どこかで発生した決済不能が連鎖していくという問題点があります(詳しくは こちら をご参照下さい)。ほかにも、決済不能が生じた場合、必要に応じて、中央銀行が決済を完了させるのに必要な流動性(おかね)の供給を行うことが想定されているため、銀行にモラル・ハザードが発生しやすいなどの問題点があります。

RTGSとその特徴

「時点ネット決済」に代わって採用された「RTGS」は、個別銀行が倒産したりして決済不能に陥っても、世の中の経済全体に混乱が広がらないようにする、すなわち、システミック・リスクを相当程度抑制することのできる安全な決済手法です。

もっとも、「RTGS」にも弱点があります。それは、支払額と受取額の差し引きをしないので、個別銀行が決済のために用意しなければならないおかねの額が「時点ネット決済」に比べ、一般に大きくなってしまうということです。これに関しては、通常、中央銀行による「日中流動性」の供給という方法で弱点の克服が図られます。