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ゼロ金利コミットメントの機能について:ゼロ金利制約下での金融政策ルールの視点から(要旨)

2005年 2月
小田信之*1
永幡 崇*2

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には日本語の(要旨)を掲載しています。

なお、全文は英語のみの公表です。

  1. *1企画局 E-mail: nobuyuki.oda@boj.or.jp
  2. *2企画局 E-mail: takashi.nagahata@boj.or.jp

要旨

本稿では、名目金利のゼロ制約を踏まえた場合にどのような金融政策ルールが適切であるかについて、確率シミュレーションを利用して分析を行った。

具体的には、フォワード・ルッキングな経済主体とバックワード・ルッキングな経済主体の両者の存在を許容したIS曲線とAS曲線から構成される小規模構造モデルを想定し、日本の経済データに基づき推定を行った。その結果に基づき、名目金利のゼロ制約を明示的に取り込んだ各種の金融政策ルールについて確率シミュレーションを行い、社会的損失の最小化という観点でどの金融政策ルールが優れているかを調べた。想定した金融政策ルールの基本形は、ゼロ金利期以前のデータによって推定したテイラー型のシンプル・ルールである。これをベースとして、デフレに直面した場合に「インフレ率が将来特定の水準を上回るまではゼロ金利を継続する」といったタイプの政策コミットメントを付加した金融政策ルールなどを分析の対象とした。

分析の結果、コミットメント導入時点における需要ショックや供給ショックの状態に応じてコミットメントの内容(ゼロ金利継続の条件)を適切に設定すれば、このタイプの金融政策ルールは効果的に機能し得ることなどが分かった。また、線形なテイラー型ルールを修正して、名目金利がゼロ%に近い状況ではより予防的に金融緩和を行うという非線形性を適切に取り入れた金融政策ルールが信認を得れば、政策コミットメントを付加しなくても、優れた政策パフォーマンスを得られる場合が多いことなども分かった。