わが国における賃金・物価上昇率の連関
2024年6月28日
上野陽一*
全文掲載は、英語のみとなっております。
本稿の和文解説は、日銀リサーチラボ・シリーズ内の「わが国における賃金・物価上昇率の連関」としても公表しております。
要旨
本稿は、わが国における賃金・物価の連関の変化を、きめ細かい賃金と物価のデータからなるダイナミック・ファクターモデルと不均一分散自己相関頑健推論を用いて分析している。実証分析結果から、そのモデルが、賃金・物価の基調を捕捉するうえで、総計データのみを用いるモデルよりも有効であることが示される。また、本稿で分析した指標の中では、サービス価格上昇率のトレンド成分が、基調的な物価上昇率を測定するうえで最も優れた指標である。さらに、賃金と物価の連関については、1998年頃に失われたものの、コロナ禍以降、相応に回復していることも示唆される。最後に、賃金・物価の連関の強さを左右する、賃金・物価上昇率に共通なトレンド成分の変動性は、企業が賃金改定において物価上昇率をどの程度重視するかを表す指標と概ね一致して推移している。
- JEL 分類番号
- E31、E37、J31
- キーワード
- 物価上昇率、賃金上昇率、観測不能成分推定モデル、ファクターモデル
本稿の作成に当たっては、青木浩介氏、星岳雄氏、白塚重典氏、代田豊一郎氏、および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。ここに記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは筆者に帰する。なお、本稿で示されている内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *日本銀行調査統計局(現・名古屋支店) E-mail : youichi.ueno@boj.or.jp
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