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自然利子率の計測をめぐる近年の動向

2024年8月28日
杉岡優*1
中野将吾*2
山本弘樹*3

要旨

自然利子率(r*)は景気や物価に対して中立的な実質金利の水準であり、金融政策スタンスを評価する際のベンチマークの一つとして知られている。r*は、直接観察することができないため、何らかの仮定に基づいて推計する必要がある。本稿では、r*を推計するために、これまで考案されてきた複数の手法について、それぞれ特徴を整理したうえで、わが国経済への適用を行った。推計されたr*をみると、いずれの推計値も長期的にみて低下傾向にあることが確認された。もっとも、r*の推計結果には、用いる手法により、大きなばらつきが存在するほか、新たなデータが追加されると、事後的にみて現在の推計値が変わり得るという性質がある。そのため、政策運営にあたっては、相当の幅を持って評価する必要がある。

JEL 分類番号
C32、E43、E52

キーワード
自然利子率、均衡実質金利、均衡イールドカーブ、期間構造

本稿の執筆に当たっては、安藤雅俊氏、伊藤雄一郎氏、長田充弘氏、開発壮平氏、小枝淳子氏、小林慶一郎氏、佐々木貴俊氏、中島上智氏、長野哲平氏、中村康治氏、畑山優大氏、福永一郎氏、「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」の参加者、31th SNDE Annual Symposiumの参加者、および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。ただし、残された誤りは全て筆者らに帰する。なお、本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局 E-mail : yuu.sugioka@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局 E-mail : shougo.nakano@boj.or.jp
  3. *3日本銀行企画局(現・国際局) E-mail : hiroki.yamamoto@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
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