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卸売物価指数(1995年基準)のFAQ

2002年2月

目次

2. 卸売物価指数 (Wholesale Price Index

2−1. 卸売物価指数とはどんな物価指数ですか。生産者物価指数、消費者物価指数、商品市況指数とどう違うのですか。

卸売物価指数は、日本銀行が1887(明治20)年以降継続的に作成している物価指数です(公表開始は1897<明治30>年)。当初、日本銀行が自ら物価指数を作成することとしたのは、日清戦争を契機とした物価の高騰が大きな社会問題となる中で、主要商品の需給動向を敏感に反映する取引価格を卸商から収集し、景気分析さらには政策判断の重要な材料として活用することが狙いでした。その後、わが国の経済の構造変化や統計作成手法の発展を背景に、価格の調査方法や指数の作成方法には改良が加えられていますが、「需給を反映する価格の調査」という卸売物価指数の目的は今日に至るまで何ら変わるところはありません。

卸売物価指数の主な特徴としては、(a)企業間で取引される商品の価格に焦点を当てた物価指数であること、(b)予め価格調査段階を統一することなく、「生産者→1次卸→2次卸→・・・・→小売」という商品の流れの中で、当該商品の需給を最も敏感に反映する流通段階の価格を調査していること、が挙げられます。

諸外国で作成されている生産者物価指数は、企業間で取引される商品の価格に焦点を当てた物価指数であるという点で卸売物価指数と類似しています。しかし、金額ベースで表される出荷額を数量ベースに引き直す(=実質化する)ためのデフレータとしての機能を重視する立場から、価格調査段階を予め生産者からの出荷段階に限定しており、価格調査先の選定に対する考え方が、日本の卸売物価指数とは異なります。

消費者物価指数は、消費者が日常的に購入している商品やサービスの価格に焦点を当てた物価指数で、消費者の生計費の動きを測定することを主な狙いとしていますので、卸売物価指数とは調査の目的や対象範囲が異なります。

商品市況指数とは、市場において大量に取引され、相場が需給関係に敏感に反応して変動するような商品(主に一次産品や素材製品)の価格に焦点を当てた価格指数です。卸売物価指数に比べると採用品目が非常に少ないばかりでなく、各商品の相対的重要度(ウエイト)が考慮されないケースが多いなど、卸売物価指数とは対象範囲や調査方法が異なります。

2−2. 卸売物価指数はどのような目的に利用されていますか。

企業間で取引される国内品(国産かつ国内向けの商品)の価格動向を集約した国内卸売物価指数の総平均は、生産・出荷・在庫の動きに示される需給動向を敏感に反映しており、また前月計数が翌月上旬に発表されるなど速報性も高いことから、マクロの経済指標の一つとして重視されています。また、内外の需給動向のほか、為替相場の動きにも左右される輸出品や輸入品の価格動向をみるときには、国内品とは別に作成されている輸出物価指数と輸入物価指数の総平均が役に立ちます。

他方、個別品目など下位集計段階の指数は、内閣府経済社会総合研究所が作成している『国民経済計算(GDP統計など)』や経済産業省が作成している『鉱工業生産指数』の基礎データとして広く利用されています。また、民間企業の一部では、値決めの際の参考指標としても利用されています。

2−3. 卸売物価指数を利用する際に、どんな点に気をつければよいですか。

卸売物価指数は、国内品(国内市場向けの国内生産品)を対象とした国内卸売物価指数、輸出品を対象とした輸出物価指数、輸入品を対象とした輸入物価指数に分けて作成されています。そこで、利用に際しては、目的に応じて各指数を単独ないし組み合わせてみていくことが必要です。

組み合わせの例としては、(a)製造業の生産活動や収益との関連を考える際に、国内卸売物価指数と輸出物価指数を合わせて観察する、(b)消費者物価指数への価格波及を考える際に、国内卸売物価指数と輸入物価指数を合わせて観察する、(c)為替相場変動が国内物価に及ぼす影響をみる場合、輸入物価、国内卸売物価、消費者物価の動向を合わせて観察する、といったことがよく行われます。

なお、日本銀行では3つの物価指数を合成した「総合卸売物価指数」も公表していますが、これは、国内、輸出、輸入を一本の指数で捉えていた1975(昭和50)年基準指数以前の指数との連続性への配慮から作成しているものです。「総合」というと、いろいろな要素を加味した最も包括的な、あるいは最も標準的な指標であるとの印象をもたれる向きもあるかも知れませんが、こと「総合卸売物価指数」については、分析道具としての有用性は非常に限られたものである点に留意が必要です(そもそも、1980<昭和55>年基準指数への移行の際に、国内、輸出、輸入を別々の指数に分けたのも、変動相場制への移行、輸出入取引の拡大といった流れの中で、3種類の物価を一つの指数に纏めてみていくことに無理が出てきたためです)。このため、日本銀行では2002年12月に予定している卸売物価指数の次回基準改定(2000<平成12>年基準への移行)にあわせて、無用の誤解を与えかねない「総合」という表記を取り止め、本指数を「国内・輸出・輸入の平均指数」との呼び方に変更したいと考えています。

次に、「重複計算」と呼ばれる卸売物価指数にみられるクセにも注意する必要があります。例えば、原油の値上がりが川下の製品に転嫁されていく過程を考えると、値上がり率は川上製品ほど大きく、川下へ行くほど小さくなる(投入コストに占める他の要素の割合が大きくなる)のが普通です。一方、「国内卸売物価指数」は、企業間で取引される国内品(国内市場向けの国内生産品)を対象としていますので、その中には、原材料、中間製品、最終製品など多段階の製品が混在しています。このため、原油価格が大幅に上昇した際などには、川上から川下に至る各段階の価格動向を加重平均した「総平均」指数の上昇率が、「最終財」の上昇率を上回るケースが生じます。これは、全商品の生産者出荷額を指数のウエイトに用いていることから不可避的に生じる「重複計算」と呼ばれる統計上のクセで、海外で作成されている生産者物価指数にも同様にみられます。

従って、「重複計算」のクセを持たない消費者物価指数やGDPデフレータと変化幅を比較するような場合には、国内卸売物価指数の「総平均」を用いずに、別途集計・公表されている「需要段階別・用途別指数」(採用品目を「素材原料」、「中間財」、「最終財」といった需要段階別や、「資本財」、「消費財」といった用途別に分類して集計した指数)を利用することが適当です。ただし、国内卸売物価指数の時系列を需給指標などとして単独で利用する場合には、重複計算をそれほど気にする必要はありません。

2−4. 卸売物価指数で採用している品目やそのウエイトはどのように決めているのですか。

卸売物価指数は「企業間で取引される商品」の物価指数ですので、品目の選定やウエイトの計算に際しては、企業間で取引されている商品の種類や取引量を知る必要があります。しかし、残念ながら、各商品の取引額を定期的かつ網羅的に把握できるような統計は存在しません。

そこで日本銀行では、卸売物価指数が初めて加重平均型の指数を採用した1933(昭和8)年基準指数以降、主に経済産業省『工業統計表』の生産者出荷額や財務省『日本貿易月表(いわゆる貿易統計<通関統計>)』の輸出入額を品目の選定やウエイトの計算に利用しています。

具体的な選定基準は以下のとおりです。

  1. (a)国内卸売物価指数では、原則として、基準年における国内市場向け国内生産品の生産者出荷額(1995<平成7>年基準の場合は2,542,142億円)の1万分の1(254億円)を超える出荷額の商品を採用する。
  2. (b)輸出物価指数では、原則として、基準年における通関輸出額(1995<平成7>年基準の場合は382,664億円)の1万分の5(191億円)を超える通関額の商品を採用する。
  3. (c)輸入物価指数では、原則として、基準年における通関輸入額(1995<平成7>年基準の場合は281,496億円)の1万分の5(141億円)を超える通関額の商品を採用する。

ただし、上記はあくまでも原則で、実際には、(a)採用基準に満たない商品でも、先行き成長が見込まれるものや、分類編成上のバランスから重要と思われるもの(注)は採用する、(b)採用基準額以上の商品でも多品種少量生産のため品質を一定とした価格を継続的に調査することが極めて困難な場合や、同一企業内での内部取引(事業所間取引)が中心で、市場動向を直接反映した価格の調査が難しい場合は採用しない、といった取扱いも行っています。

  • (注)化学製品等では、個別商品毎の取引金額は採用基準(国内卸売物価の場合は約250億円)に満たないが、類似の商品を幾つか合計した商品群レベルでみるとかなりの規模(例えば1,000億円超)の取引が行われている場合があります。こうした場合、採用基準を一律に適用し全ての商品を非採用とするより、一部の商品を(あるいは類似した複数の商品をまとめて)品目として指数に取り込み、その上に商品群を設定した方が、分類編成のバランスからみて好ましいと考えられます。

このようにして採用された品目の数は、1995(平成7)年基準指数の場合、国内卸売物価指数971品目、輸出物価指数209品目、輸入物価指数247品目、3者の合計で1,427品目となっています。

2−5. 卸売物価指数には、何故サービスが含まれていないのですか。

確かに、諸外国においては、わが国の卸売物価指数に近い概念である生産者物価指数等へサービス価格を取り込んでいる例があります。しかしながら、卸売物価指数と企業向けサービス価格指数では、ウエイトを算定するための基礎となる統計が異なっており(前者が経済産業省『工業統計表』および財務省『日本貿易月表』、後者が総務省統計局『産業連関表』)、両者の整合性をどう取っていくかという大きな問題があります。産業連関表の公表が工業統計表より2年程度遅れるという問題もあります。また、企業向けサービス価格指数には、サービス取引のなかで大きなウエイトを占める卸小売業の商業マージンや金融機関の利鞘(金融帰属利子)が、信頼性のある適当な価格データの入手が困難であるため含まれていない(3-7参照)など、カバレッジ等の面でも十分とは言えません。

日本銀行としては、指数の一貫性や精度を犠牲にして両者を統合するよりも、分析ニーズに応じた加工・組み替えはユーザー皆様の手に委ねつつ、その材料である個々の物価指数の精度や透明性を高めていくことの方が先決と考えています。

2−6. 卸売物価指数は卸売段階の企業だけから価格を調査しているのですか。

いいえ。卸売物価指数の最大の狙いは「需給を反映した価格を調査する」ことにありますので、「生産者→1次卸→2次卸→・・・・→小売」という商品の流れのどの段階で価格を調査するかについては、予め決めておらず、各商品の実情に応じて判断しています。より具体的には、以下の3点を価格調査段階を決める際の基準としています。

  1. (a)1次卸が自らの在庫を持ち積極的に需給調整機能を果たしている場合は、1次卸段階の価格を調査する、
  2. (b)生産者から小売店ないしユーザーへの直売形態が一般的である(ないし卸段階の企業が形式的に介在するものの価格決定への影響力が低い)場合には、生産者段階の価格を調査する、
  3. (c)1次卸と生産者のどちらでも需給を反映する価格が調査可能と思われる場合については、原則として1次卸から価格を調査する。

生産者段階の価格を調査している品目は、戦前までは全体のごく一部に限られていましたが、戦後は、(a)わが国の産業構造が高度化し、機械類の占めるウエイトが大きく高まったこと、(b)大型量販店の増加に伴い、消費財の流通構造に変化が生じ、メーカーと量販店が直接価格交渉を行うケースが増えてきたこと、などから生産者段階の価格を調査している品目の比率は上昇の一途を辿りました。現行の1995(平成7)年基準国内卸売物価指数では、ウエイトに占めるシェアでみて全体の約7割が生産者段階の価格となっています。詳しくは、「卸売物価指数の解説」の付録編の「(付4)国内卸売物価指数の類別ごとにみた価格調査段階」、および同付録編の「(付表)国内卸売物価指数における品目ごとの価格調査段階」をご覧ください。

なお、2002年12月に予定している、卸売物価指数の次回基準改定(2000年<平成12>年基準への移行)からは、「需給を反映した価格を調査する」との大原則を損わない範囲内で、デフレータとしての利用ニーズ(個別品目などの名目出荷額を実質化する際の価格指数<デフレータ>として利用したいとのニーズ)により応えるため、「1次卸と生産者のどちらでも需給を反映した価格が調査可能と思われる場合」については、生産者段階の価格を調査する(上記<a>~<c>のうち<c>の基準を変更する)方向で準備を進めています。また、「卸売段階を対象とした物価指数である」との誤解を避けるため、「卸売物価指数(Wholesale Price Index:WPI)」という呼称も、「企業物価指数(Corporate Goods Price Index:CGPI)」に変更し、指数の体系も合わせて見直す方向で準備を進めています。卸売物価指数の見直しについて、より詳しくお知りになりたい方は、2−23および1999年公表の「卸売物価指数の現状と見直し案について」「卸売物価指数の見直しに関する日本銀行の今後の取り組み方針」、2001年公表の「卸売物価指数の見直し方針」「卸売物価指数の見直しに関する最終案」をご覧ください。

2−7. 卸売物価指数の調査対象商品はどのように決めているのですか。

価格調査に協力して頂いている企業の方々のご負担を考えると、調査価格の数をむやみに増やすことはできず、こうした中で、精度の高い物価指数を作成することが統計作成者の責務です。このため、日本銀行では、各品目の「調査対象商品」を決める際に、当該品目全体の価格の動きを代表するような商品を選ぶこと(=代表性の確保)に細心の注意を払っています。具体的には、各企業の取扱い商品のうち取扱い金額の大きな商品(売れ筋商品)を調査することを原則としています。また、同一品目において、高級品・普及品別や用途別(例えば、自動車産業向けと家電産業向け)等の区分によって価格動向が異なる可能性がある場合には、調査対象商品が一部(例えば高級品)に偏ることがないよう配慮しています。

同時に、調査先のプライバシー保護にも重点を置いています。具体的には、特定の調査先の価格の変化がストレートに品目指数に反映されることのないよう、各品目について複数の企業から複数の価格を調査し、それらを合算する形で指数を作成することとしています。因みに、2001年12月時点での調査価格の数は、国内、輸出、輸入の3つの物価指数合計で4,901、1品目あたり3.4となっています。

なお、調査価格の設定に際しては、調査先と相談したうえで、代表的な商品の名称だけでなく、型式番号、取引の相手先、取引単位、引渡・支払条件などを可能なかぎり特定し、同一条件の下で取引される同一商品の価格の推移を極力追跡するようにしています。

2−8. 消費財などでは商品の世代交代が頻繁に生じていますが、新商品の価格は調査されているのですか。

精度の高い物価指数を作成するためには、各品目において、常に取引額が大きな代表的商品(売れ筋商品)の価格を調査していく必要があります。こうした観点から、卸売物価指数では、新しい商品が登場し、それがこれまで調査してきた商品に代わる主力商品に成長してきた段階で、速やかに調査対象商品を変更することとしています。例えば、2001年中の調査価格の変更実績は、卸売物価指数全体で延べ1,003回となっており、単純に考えると、調査対象商品全体(2001年12月4,901)の約20%が新しいものに入れ替わっている計算になります(詳しくは「卸売物価指数における調査価格の変更実績」をご覧ください)。

また、パソコン、携帯電話、カーナビゲーションシステムのように従来の商品と大きく異なった新しい種類の商品が登場した場合には、5年毎の基準改定に併せてウエイトを見直す際に新たな品目を設けて、指数に取り込むようにしています。因みに、パソコンは1985(昭和60)年基準指数から、また、携帯電話とカーナビゲーションシステムは1995(平成7) 年基準指数から、それぞれ卸売物価指数に採用しています。

2−9. 調査対象商品を変更する際に、新旧商品に質的な差がある場合、両者の価格差を、卸売物価指数上でどのように処理しているのですか。

技術進歩型の商品の場合、新しく登場した商品の方が旧来の商品よりも機能的に優れているのが一般的です。その場合、新旧商品の価格差の中には、(a)機能(品質)向上に伴う価格上昇部分と、(b)品質変化の影響を除いた実質的な価格変動部分という2つの要素が含まれています。一方、物価指数は、「同じ機能(品質)の商品が同じ条件で取引された場合の価格の動きを把握する」ことを目的としているため、両商品の表面上の価格差から、(b)の実質的な価格変動部分のみを取り出して、指数に反映させる必要があります(こうした作業を一般に「品質調整」と呼びます)。卸売物価指数では、技術革新等の効果を可能な限り指数に反映するため、各種手法のメリット・デメリットを見定めながら、積極的に品質調整を行っています。

具体的には、(a)調査先より聴取した新旧両商品の生産コストの差を品質変化に見合う部分とみなす「コスト評価法」、(b)新旧商品が一定期間並行販売され、その間に両者の市場価格の差が安定的に推移している場合に、これを両商品の品質差に見合う部分とみなす「オーバーラップ法」などを用いています。また、パソコンやデジタルカメラのように、商品の価格や性能を表すデータが、市販の雑誌やPOSデータなどから豊富に入手できる場合には、(c)「ヘドニック法」という計量分析的な手法も用いています。これは、既存商品の価格と性能データの関係を計測した式を用いて、新商品が発売された際に新旧両商品の性能に見合う理論価格を試算し、理論価格の差と実際の価格差との乖離幅を値上げ(ないし値下げ)とみなすというもので、技術革新による品質向上が著しく、プロダクト・サイクルの短い商品に対して使用するメリットの大きい手法として、注目されている品質調整手法です。

新旧商品の価格を接続する手法としては、これ以外に、(d)新旧商品間で品質面での違いが無い場合に、両者の価格を直接比較したうえで指数に反映させる「直接比較法」、(e)商品の性質自体には変化が無いものの、取引数量が変化した場合に、取引数量を合わせたうえで両者の価格を比較する「単価比較法」も用いています。

もっとも、例えばオーディオ・テープとコンパクト・ディスクのように新旧商品が著しく異なる場合や、価格調査先の事業撤退などにより調査対象商品を変更しなければならない場合などには、同一の調査先から新旧商品の生産コストの差や新旧商品の価格差の推移を調査することは困難です。こうしたケースは、調査価格の変更全体の3~4割程度あり、指数上はやむを得ず保合いとして処理するケースが多くなっています。品質調整についてより詳しくお知りになりたい方は、「物価指数の品質調整を巡って−卸売物価指数、企業向けサービス価格指数における品質調整の現状と課題−」「卸売物価指数におけるヘドニック・アプローチ−現状と課題−」をご覧ください。また、各種品質調整法の適用実績については、四半期毎に公表している「卸売物価指数における調査価格の変更実績」をご覧ください。

2−10. 卸売物価指数の中で、ヘドニック法による品質調整を行っている商品には何がありますか。

ヘドニック法は、「商品の品質の差は、両者を構成する諸特性(性能)の数値の差に現れる」との考え方に基づいて、価格と特性値の関係(ヘドニック回帰式)を計量的に推計し、その関係式から、「品質変化以外の実質的な価格変動」を抽出する方法です。

ヘドニック法を用いる最大のメリットは、品質を評価する際、主観的な判断や恣意性を排し、機能や性能を表すデータと統計的手法に判断基準を求める点にあり、客観性や透明性の面で優れています。また、データさえ収集できれば、比較的容易に品質調整を行えるため、パソコンのように品質変化が激しく、プロダクト・サイクルが短い等の理由で、コスト評価法やオーバーラップ法といった従来型の品質調整法が適用できない商品にも活用できるメリットがあります。

こうした観点から、卸売物価指数では、1990(平成2)年基準指数から、パーソナルコンピュータ(注1)に、2001年1月からは、新たにビデオカメラ、デジタルカメラ(注2)にもヘドニック法による品質調整を適用しています。なお、ヘドニック法については、米国、カナダのほか、EU諸国においても、推計手法の研究や実際の物価指数への適用が進んでいます。また、総務省が作成する消費者物価指数でも、2000(平成12)年基準指数においてパソコンを新規に採用するに当り、同法の適用を開始しています。同法について詳しくお知りになりたい方は、「卸売物価指数におけるヘドニック・アプローチ−現状と課題−」をご覧ください。また、実際に使用しているヘドニック推計式の内容は、年2回の更新の都度、「ヘドニック法の適用例」として公表しています。

もっとも、同法により、精度の高い結果を得るためには、(a)各商品の品質を表す主要な特性が数値により把握可能である、(b)価格とそうした特性に関する大量のデータを収集できる、といった前提条件が必要です。卸売物価指数では、従来、汎用コンピュータやサーバ(注3)、磁気ディスク装置(注4)についても同法を適用していましたが、メーカー各社の販売戦略の変化により、説明変数となる特性情報を同一の基準で収集することが難しくなってきたことから、2001年以降はヘドニック法の適用を取り止め、コスト評価法による品質調整を行っています。日本銀行としては、今後も各種品質調整法の研究を深めながら、最も精度の高い手法を適用すべく努力していきたいと考えています。

  1. (注1)汎用コンピュータ(メインフレーム)やサーバとともに、国内卸売物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の品目「電子計算機本体」を構成しています。
  2. (注2)現行の1995年基準指数では、基準改定当時の工業統計表の分類に従う形で、デジタルカメラも、国内卸売物価指数および輸出物価指数の品目「ビデオカメラ」に含めています。
  3. (注3)注1参照。
  4. (注4)フロッピーディスク装置等とともに、国内卸売物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の品目「外部記憶装置」を構成しています。

2−11. 日本(卸売物価指数)のコンピュータ価格は、米国(生産者物価指数)に比べ低下ピッチが遅いという話を聞きましたが、それは何故ですか。

最近、卸売物価指数の「電子計算機本体」と米国の生産者物価指数の「パソコン」を比較し、日本の方が価格の下がり方が著しく小さいとの声が聞かれています。しかし、そうした指摘の中には、誤解に基づくものもあるため、事実関係を改めてご説明します。

まず、卸売物価指数で公表している「電子計算機本体」は、パソコンから、汎用コンピュータ、サーバまでを含めた広い概念を指しており、そうした全体を示す指数と、値下がり幅が相対的に大きいパソコンのみの動きを比較することには無理があります。

また、日米のコンピュータ価格を比較する場合には、コンピュータ全体に占めるパソコン、汎用コンピュータ等、各商品の構成比の違いの影響も無視できません。実際、コンピュータ全体に占めるパソコンのウエイトは、卸売物価指数(1995年基準ベース)の約半分に対し、米国の生産者物価指数(1992年基準ベース)では約7割と異なっています。言い換えれば、対象範囲がほぼ等しい「電子計算機本体」と「コンピュータ総合」のベースでみても、米国の生産者物価指数の方が、価格低下が著しいパソコンのウエイトが大きい分、コンピュータ全体の下落幅が大きく出る訳です。

もっとも、こうした技術的要因だけで、日米のコンピュータ価格の差を説明できる訳ではありません。そうした観点から、個々の内訳指数の動きをみると以下のとおりです。

まず、パソコン価格については、卸売物価指数、米国の生産者物価指数ともに、ここ5年間ほどで著しく価格が下落しており、日米間で大きな違いはみられません(図表1参照(注))。

  • (注)現在の卸売物価指数では、「電子計算機本体」という品目指数を対外公表の最小単位としています。図表中のパソコン価格指数は、このところIT関連財の価格動向に対する関心が高まっていることを踏まえ、価格調査先の了解を得た上で公表したものです。

図表1 パソコン指数の国際比較

(1)1995年~1999年

  • 1995年から1999年のパソコン価格について、日本の消費者物価指数と卸売物価指数、米国の生産者価格指数とその円換算ベースの4指数の推移を比較したグラフ。詳細は本文の通り。
  • (注)日本・消費者物価指数は、総務庁(現総務省)統計局による、ヘドニック検討資料より抜粋。米国・生産者物価指数、同円換算ベースは、Personal Computers and Workstations(概ねデスクトップ型にあたる)の系列。

(2)2000年以降

  • 2000年から2001年のパソコン価格について、日本の消費者物価指数(デスクトップ型)と卸売物価指数、米国の生産者価格指数とその円換算ベースの4指数の推移を比較したグラフ。詳細は本文の通り。
  • (注)日本・消費者物価指数デスクトップ型は、2000年基準。米国の系列は上段グラフの注を参照。

一方、汎用コンピュータについては、卸売物価指数の方が価格の低下テンポがかなり緩やかなものに止まっています。汎用コンピュータは、カスタムメイド色が極めて強いうえ、1度導入されると取引関係が長期に及ぶケースが少なくないため、仕様毎・取引先毎に価格が区々です。従って、そもそも、機能の標準化が進んでいるパソコンに比べて、国際的な価格裁定が働きにくいという面があります。また、モデルチェンジの頻度が3~4年に1度程度である点も、半年~1年単位でスペックが大きく変化するパソコンとは状況が異なっています。しかし、それ以外にも以下のような、物価指数作成上の問題点が関係している可能性も否定できません。

  1. (a)汎用コンピュータの価格交渉は、搭載ソフトウエアやオプション等を含めたセットで行われるケースが多いため、成約した価格からハード本体の実勢価格だけを取り出すことが難しい面があります。
  2. (b)従来、日本銀行では、パソコンのほか汎用コンピュータの品質調整にもヘドニック法を適用していましたが、メーカー各社の販売戦略の変化により、説明変数となる特性情報を同一基準で入手することが難しくなる中で、パソコンとは異なり、十分な品質調整が行えていたとは必ずしも言えません。こうした特性情報の制約に対処するため、汎用コンピュータについては、2001年から、品質調整法を従来のヘドニック法からコスト評価法に変更しています(詳細は2−10参照)。

日本銀行としては、今後、上記問題点の解消に向けて、品質調整手法の研究や価格調査方法の見直しにさらに積極的に取り組んでいきたいと考えています。また、指数の対象範囲についても、2002年12月に予定している次回基準改定(2000年基準への移行)に向けて、できる限り改善していきたいと考えています。具体的には、コンピュータ全体に占めるウエイトが急増しているパソコン価格の国際比較を容易にするため、現行の「電子計算機本体」という品目を「パソコン」と「汎用コンピュータ・サーバ」の2つに分割する方向で作業を進めています。

2−12. 調査価格の変更状況等を知りたい場合は、どうすればよいですか。

日本銀行では、商品の世代交代等がおきた場合、遅滞なく調査価格を変更することとしており、その実績(調査価格の変更件数や主な品目名)についても、「卸売物価指数における調査価格の変更実績」の形で、四半期毎に公表しています。また、その際に、どういった品質調整法を適用したかについても、同資料の中で公表しています。因みに、国内卸売物価指数(2001年12月の調査価格数3,378)では、2001年中に延べ639回、調査価格を変更しており、そのうちコスト評価法を全体の約3割に、直接比較法を約2割に、オーバーラップ法を約1割に、ヘドニック法を約4%に、単価比較法を約2%に、それぞれ適用しています(各種品質調整法の概要については2−9をご覧ください)。

また、「調査価格の変更」の中には、単に調査対象商品を変更するのではなく、例えば「卸売段階から生産者段階へ」といった形で、「価格調査段階」自体を変更するケースもあります。こうしたケースは、あまり多くありませんが、(a)流通構造が変化し、卸売段階ではなく生産者段階の方が、需給の動きをより反映した価格が調査可能となった場合、あるいは(b)技術革新による実質的な価格下落が激しく、生産者段階から調査した方が、その影響を含めた価格動向を的確に指数に反映できると判断される場合等には、弾力的に見直す扱いとしています。

因みに、2001年中の国内卸売物価指数でみると、繊維製品や輸送用機器、その他工業製品等の28品目において、一部商品の価格調査段階を、卸売段階から生産者段階に変更しています。このため、厳密に言えば、これら品目については、価格調査段階の変更前後で指数の性格が変化しています。日本銀行としては、統計作成方法の透明性向上に向けて、こうした見直しに関する情報についても、できるだけ詳細に公表していきたいと考えています。なお、品目ごとの価格調査段階については、「卸売物価指数の解説」の付録編の「(付表)国内卸売物価指数における品目ごとの価格調査段階」をご覧ください。

さらに、2001年には、国内卸売物価指数において、こうした品質調整を行った結果として指数がどの程度変化したのかをはじめて試算しました(ご関心のある方は、「物価指数の品質調整を巡って—卸売物価指数、企業向けサービス価格指数における品質調整の現状と課題—」をご参照ください)。2002年からは、毎年、この品質調整効果を計算・公表していく予定です。

2−13. 指数を作成するうえで、消費税はどのように扱われていますか。

国内卸売物価指数は、消費税を含むベースで作成しています。より正確に言うと、消費税を含まないベースで調査した価格に機械的に消費税率を乗じている場合と、消費税を含むベースの価格を直接調査している場合があります(最近では、前者のケースが多くなっています)。また、国内卸売物価指数には、消費税のほか、酒税、揮発油税、たばこ税、石油ガス税等の個別間接税も、原則として含まれています。

一方、(a)輸出物価指数は、原則として本邦からの船積み段階の価格を、また、(b)輸入物価指数は、原則として本邦への入着段階の価格を調査しており、いずれも消費税を含まないベースで作成しています。

もっとも、国内卸売物価指数については、商品の需給動向の分析や国民経済計算等の算定に利用する観点から、「消費税を除くベース」で作成して欲しいとのニーズも少なくありません。このため、日本銀行では、2002年12月に予定している卸売物価指数の基準改定(企業物価指数への移行)にあわせて、「消費税を除くベース指数(国内企業物価指数<現在の国内卸売物価指数>および需要段階別・用途別分類の国内需要財指数)」を作成し、参考指数として別途公表する方針です。

2−14. 円ベースの輸出入物価指数を作成する際にどのような為替相場を用いているのですか。

円ベースの輸出入物価指数を作成する際には、契約通貨建価格を銀行の対顧客電信直物相場(輸出=外貨の買相場、輸入=外貨の売相場)の月間平均値により、調査価格ごとに円価格に換算のうえ指数化しています。

なお、従来は、その月に契約が無かった場合、契約通貨建価格(指数)だけでなく、円換算に用いる為替相場についても前回調査比横這い(従って円換算価格<指数>も横這い)としてきましたが、2000年1月分指数からは、契約の有無にかかわらず、その月の為替相場の動きを一律に反映させるかたちで、円換算を行う方法に変更しています(従って、その月に契約が無く、契約通貨建価格<指数>が横這いの時でも、為替相場が変化すれば、円ベース価格<指数>は変動します)ので、輸出入物価指数、需要段階別・用途別指数などをご利用になる際にはご注意ください。

なお、契約通貨ベースの指数については、ユーザーニーズがごく一部に限られていたため、対外公表を総平均および類別指数に止めていましたが、皆様のニーズにより肌理細かく応えるため、2002年1月からは、品目指数等の内訳指数についても照会に応じることとしています。品目指数等の内訳計数をお知りになりたい方は、日本銀行調査統計局物価統計課(03-3279-1111 内線4060)まで直接ご照会ください。

2−15. 輸出入物価指数における契約通貨別の構成比はどのようになっていますか。

2001年12月分指数では、輸出物価指数の場合、円建が24%、外貨建が76%(米ドル建が63%)、また、輸入物価指数の場合は、円建が19%、外貨建が約81%(米ドル建が75%)となっています。

なお、1999年12月分指数からは、総平均ベースだけでなく、類別ごとの内訳についても、日本銀行ホームページ(「輸出入物価指数の契約通貨別構成比」)および『物価指数月報』上で公表(原則として各年12月分を掲載)しています。

2−16. 卸売物価指数は、時折、過去の計数が訂正されていますが、どういう場合にリバイスを行っているのですか。何かルールはあるのですか。

卸売物価指数では、年2回、4・10月の3・9月指数公表時に、遡及訂正を実施しています。これは、指数精度をより高めるために2001年10月から新たに開始したもので、原則として直近1年分を対象に実施することとしています(2001年10月の第1回時のみ1999年1月に遡って実施)。遡及訂正の対象となるのは、以下のようなケースです(注1)。詳細については、「卸売物価指数の見直しに関する最終案」をご覧ください。

  1. (a)指数公表後に計数に誤りが判明した場合、
  2. (b)調査先からの価格報告がその月の指数作成期限に間に合わなかった場合、
  3. (c)当該四半期等の価格が後決めされる場合(注2)
  1. (注1)このほか、(d)指数公表後に割引を含めた実勢価格等、より適切な計数が判明した場合についても、遡及訂正を実施することとしています(企業向けサービス価格指数における通信のケース)が、卸売物価指数では今のところこれに該当するケースはありません。
  2. (注2)C重油、ナフサ、エチレンといった石油化学製品等では、例えば「4~6月分の出荷価格が6月に決まる(正式な価格が後決めされる)」といった商慣行が一般的な場合があり、これまで卸売物価指数では、正式な価格が決定した段階(6月)で指数に反映することとしていました。しかし、こうした商品の一部では、価格が正式に決まる前にメーカーが提示する仮価格(コスト変動を見込んだ暫定的決済価格)によって取引が行われるケースがみられており、指数の動きが現実の価格の動きを後追いする形となっていました。

ただし、上記(a)(b)のうち、「影響度が大きいもの」(それにより総平均指数が変化するか、それに準ずる場合)については、より迅速な対応が望ましいと思われるため、上記とは別に、要訂正の事実が判明した段階で「速やかに」訂正を実施することとしています。

なお、これ以外にも、5年に一度の基準改定の際には、全ての指数が過去に遡ってリバイスされますのでご注意ください。

2−17. 卸売物価指数は季節調整されていますか。

卸売物価指数の中には、「食料用農畜水産物」や「電力」など、価格が比較的はっきりした季節変動を示す品目があります。しかし、こうした品目は全体からみればごく僅かであり、「総平均」のレベルでは季節性が観察されないことから、卸売物価指数に対する季節調整は実施していません。卸売物価指数の利用に際して、季節調整の必要があると判断される場合には、お手数ですがユーザーの皆様ご自身で適宜行って頂きたいと思います。

なお、季節調整のプログラム(X-12-ARIMA)は、米国商務省センサス局(http://www.census.gov/)(外部サイトへのリンク)のホームページから入手することができます。

2−18. 卸売物価指数は5年毎に基準改定されていますが、卸売物価の動きを長期的な時系列で眺めたい場合はどうすればよいのですか。

卸売物価指数の長期時系列データには以下の2種類がありますので、用途に応じてご利用ください。ただし、これら指数は、各基準年毎の指数を長期にわたって繋いだものであるため、5年毎の基準改定によって、(a)採用品目やウエイトが見直されていること、(b)基準年の変更により個々の指数レベルが一旦基準年=100.0に戻るため、品目指数の変化率が変らなくても、総平均等の上位分類指数へ及ぼす影響度が変わっていること(2−26参照)から、厳密には、基準年が切り替わる時点で指数の性格が変化している点にご注意ください。

(a)「1995(平成7)年基準接続指数」

これは、現行基準(1995<平成7>年基準)指数のベースで、過去に遡って計算した指数です。1995(平成7)年基準接続指数の場合、基本分類および特殊分類の「類別」以上、ないしはそれに準ずる上位の指数系列について、原則として、1960(昭和35)年1月まで遡及して作成しています。

なお、品目指数などの低い集計レベルの指数に関しては、接続指数を作成・公表しておりませんので、ユーザーの皆様ご自身で、系列ごとに各基準年の新・旧指数からリンク係数を求め、それを旧基準指数に乗じて頂く必要があります。

具体的な、1995(平成7)年基準接続指数の算出式は以下のとおりです。

  • 図表

(b)「「総合卸売物価・戦前基準指数」

これは、現行基準(1995<平成7>年基準)の総合卸売物価指数を、戦前基準指数の分類(基本分類の12類別および特殊分類<用途別>の5分類)に組み戻して計算したもので、1934~1936(昭和9~11)年平均を1とした指数です。なお、総平均指数は、1900(明治33)年10月、類別指数は、1931(昭和6)年まで遡ることができます。

2−19. 卸売物価指数のデータはどこから入手すればよいですか。

毎月の記者発表資料は、日本銀行ホームページの「統計・データ」コーナーで、公表と同時に閲覧できます。なお、公表日程については同「公表日程」コーナーをご参照ください。

また、「統計・データ」の中の「時系列データ」コーナーをご利用頂けば、卸売物価指数、企業向けサービス価格指数などの品目以上の殆どの長期時系列データを、電子ベースで入手することが可能です(物価統計だけでなく、マネーサプライや短観など、日本銀行が作成している他の主要統計についてもご利用になれます)。

ただし、時系列データコーナーへの最新データの掲載時間は、卸売物価指数と企業向けサービス価格指数が公表日の13時、製造業部門別投入・産出物価指数が公表翌日の8時50分となっています。なお、需要段階別・用途別指数の類別指数や、輸出物価指数・輸入物価指数の契約通貨ベースの内訳指数(品目指数等)については、現在のところ、紙ベースでも電子ベースでも提供しておりませんので、最新の指数が必要な方は、公表日の13時以降に日本銀行調査統計局物価統計課(Tel 03-3279-1111 内線 4060)までご照会ください。

また、インターネット以外のデータ入手先としては、以下のものがありますので、あわせてご活用ください。

公表している殆どの系列を掲載しているもの

  1. (a) 物価指数月報(翌月央に発刊)
  2. (b) 主要経済・金融データ CD-ROM(毎年春頃発行)

主要な系列のみを掲載しているもの

金融経済統計月報(毎月下旬に発刊)

2−20. 指数の内容についての照会はどこにすればよいですか。

日本銀行が作成している物価指数に関するお問い合わせは、下記のいずれかにお願いします。

調査統計局物価統計課

Tel:03-3279-1111(内線 4060)

情報サービス局広報課

Tel:03-3279-1111(内線 4636~4639)

なお、最新の指数のうち、(a)毎月の記者発表資料に含まれている計数(基本分類および需要段階別・用途別指数の類別以上、ないしそれに準ずる上位の分類指数)に関するご照会は、公表日の8時50分以降に、(b)基本分類の品目指数などそれ以外の内訳指数に関するご照会は、公表日の13時以降(ただし、製造業部門別投入・産出物価指数については公表翌日8時50分以降)にお願いします。

2−21. 価格調査から指数公表までの事務の流れについて教えてください。

卸売物価指数の価格調査は、統計法第8条に基づき、総務大臣に届出を行ったうえで実施している「届出統計調査」の1つであり、毎月、書面によって行っています。具体的には、毎月中旬に所定の「(価格調査表 [PDF 21KB])」を価格調査先に送付し、予め特定された商品のその月における代表的な取引価格を記入して頂いたうえで、翌月初に回収しています。その際、価格調査先に対しては、その月に契約が行われた主要取引先への販売価格をご報告頂くよう依頼しています。回収された調査表(調査価格)は、調査統計局物価統計課の約20名の担当者によって精査されたうえで集計システムに入力され、卸売物価指数が作成されます。作成された指数は、翌営業日の午前8時50分に対外公表することとしています。

なお、物価統計課では、回収された調査表(調査価格)や対外公表前の集計値等の機密情報を厳格に管理するため、課員以外の作業エリアへの立入りを禁じています。また、課員であっても業務上の必要がある者以外は、当該情報にアクセスできない扱いとしています。

2−22. 公表されるのは基準年を100.0とする指数だけで、実際の価格が公表されないのは何故ですか。

卸売物価指数で調査している商品の価格は、個々の企業間における値引きなどを含めた実際の取引価格であり、企業のトップシークレットに当たるという点で、消費者向けの小売価格のように誰の目にも明らかになっている「価格」とは性格が全く異なっています。このため、価格調査に当たっては、調査した価格を対外厳秘とすることを大前提としています。また、調査先企業の名前自体も対外厳秘としています。

2−23. 日本銀行が今後計画している「卸売物価指数」の見直し方針について、具体的に教えてください。

卸売物価指数は、1897(明治30)年の「東京卸売物価指数」に始まる、わが国の経済統計の中でも最も長い歴史を持つものの一つで、その狙いは、価格を通して企業間で取引される商品の需給動向を把握することにあります。しかし、その機能が十分発揮されるためには、指数の内容が、その時々の経済構造や分析・利用ニーズを的確に反映したものとなっていることが不可欠です。

こうした観点から、日本銀行では5年毎の基準改定(1-6参照)において採用品目・ウエイトなどの見直しを行うとともに、指数の作成方法自体についても、(a)単純平均から加重算術平均(ラスパイレス指数算式)への移行(1933<昭和8>年基準指数)、(b)用途別指数(需要段階別・用途別指数の前身)、部門別指数(製造業部門別投入・産出物価指数の前身)の新設(1960<昭和35>年基準指数)、(c)国内卸売物価指数・輸出物価指数・輸入物価指数からなる現行の指数体系への移行(1980<昭和55>年基準指数)など、数次にわたって大幅な見直しを行っています。

もっとも、その後も、(a)商品の多様化や個々の商品における価格の多様化、(b)経済構造の変化の速さ、さらには(c)報告者負担への配慮の必要性の高まり等、物価指数を取り巻く環境は実体経済面・価格調査実務面の双方において大きく変化してきています。こうした観点から、日本銀行では、2002年12月の次回基準改定(2000年基準への移行)にあわせて、価格調査方法や指数の作成方法を含めた幅広い視点からの見直しを予定しています。

今回の見直しのポイントを簡単に整理すると以下のとおりです。このうち、(g)(h)は2001年10月から、(j)は2002年1月から、前倒しで実施しています。

名称、指数体系に関する見直し

  1. (a)わが国の産業構造の変化に伴い卸売段階を通さない取引の割合が増加し、既に調査価格全体の7割(ウエイトベース)が生産者段階の価格となってきているほか、今回の見直し(下記<f>)により生産者段階の価格の割合がさらに上昇すると見込まれることから、指数の名称を、「卸売物価指数」から、「企業間取引における価格を集約している」という指数の性格をより端的に示すと思われる「企業物価指数」に変更する(2−6参照)。
  2. (b)ウエイトを5年間固定する現行指数(ラスパイレス指数)の弱点を補完するための参考指数として、ウエイトを毎年更新する連鎖指数を、国内企業物価指数(現在の国内卸売物価指数)について作成する(2−26参照)。
  3. (c)商品の需給動向分析や国民経済計算の推計等のニーズに応えるため、参考指数として、消費税を除くベース指数を、国内企業物価指数および需要段階別・用途別分類のうち国内需要財指数について作成する(2−13参照)。

価格調査に関する見直し

  1. (d)商品の多様化や個々の商品における価格の多様化(一物多価の進展)に対処するため、調査価格数を、現状の4,900程度から大幅に増加させる(2−24参照)。
  2. (e)商品やその取引条件を細かく指定する従来型の価格調査方法によっては、実勢価格の把握が難しくなってきている一部の商品について、品質一定の条件を損なわない範囲内で「平均価格」(月間取引金額/月間取引数量)を導入する(2−25参照)。
  3. (f)デフレータ機能の向上を図るため、「需給動向を敏感に反映する取引段階の価格を調査する」との指数の大原則に反しない範囲内で、生産者段階における価格調査の比率を引き上げる(2−6参照)。
  4. (g)価格変動を逸早く指数に反映するため、出荷後に正式な価格が決まる(価格が後決めされる)商品のうち、信頼に足る仮価格(価格が正式に決まるまでの間の実際の取引に用いられている暫定的決済価格)が入手できるものについては、同価格を正式価格が決定するまでの速報値として利用する。

指数の作成・公表方法に関する見直し

  1. (h)指数精度向上の観点から、年2回(4・10月の3・9月指数公表時)のタイミングで定例の遡及訂正を実施する。なお、上記のうち「総平均指数が変化する」等の影響度の大きい誤りの場合は、従来どおり、要訂正の事実が判明した段階で速やかに訂正を行う(2−16参照)。
  2. (i)新規採用品目の拡充に当っては、(1)IT化、デジタル化を踏まえた関連品目の充実、(2)安価な繊維品や食料品の輸入等、流通合理化や内外価格差是正の動きを示す品目の充実、(3)機械部品や電子部品の輸出、耐久消費財や電子部品の輸入等、国際分業の更なる進展を示す品目の充実、に努める(2−272−28参照)。

報告者負担軽減のための見直し

  1. (j)報告者負担を軽減するため、ユーザーニーズが低下している旬間指数(上・中旬指数)を廃止する。これにあわせて、現在行っている旬ベースでの価格調査(上・中・下旬毎の価格を調査する方式)を、月間価格1本を調査する方式に簡素化する(2−29参照)。

なお、上記の見直し内容を固めるに当っては、1999年、2001年の2回にわたり、「予め見直し案を公表し、ユーザーの皆様から広くパブリックコメントを募る」という方法を取り入れています。見直しの内容をより詳しくお知りになりたい方は1999年公表の「卸売物価指数の現状と見直し案について」「卸売物価指数の見直しに関する日本銀行の今後の取り組み方針」、および2001年公表の「卸売物価指数の見直し方針」「卸売物価指数の見直しに関する最終案」をご覧ください。

2−24. 最近、商品の多様化や個々の商品における価格の多様化(一物多価)が一段と進んでいますが、卸売物価指数では、これにどのように対処しているのですか。

卸売物価指数では、品質変化の影響を除いた純粋な価格変動を把握するため、予め商品やその取引条件(取引の相手先、取引数量等)を指定したうえで、値引き等を含めた実勢価格を調査することを原則としています。

しかし、需要家サイドにおけるニーズの多様化や、情報通信技術の発展に伴い生産者側が自社製品の差別化や取引先毎の特徴に応じた肌理細かい価格設定に努めた結果、商品の多様化や企業の価格設定の多様化(一物多価)が一段と進んでいます。このため、品目によっては、商品やその取引条件を細かく指定する従来型の価格調査方法によっては、実勢価格を的確に把握することが難しいケースが増えてきています。

日本銀行では、2002年12月の次回基準改定(企業物価指数への移行)に向けて、調査価格数を大幅に増加させることで、こうした状況に対処していく方針です。もっとも、商品の多様化や企業の価格設定の多様化が急速に進んでいる一部商品については、調査対象を細かく指定すると同一条件での取引事例がかなり少なくなってしまい、調査価格数を増やすだけでは精度面で十分な効果を期待し難いのが実情です。具体的には、以下のような商品の場合です。

(a)商品の個別性がさらに高まっている商品

  • 多品種少量生産型の消費財の一部(衣料品等)・オーダーメイド型の機械類の一部(半導体製造装置、工作機械等)

(b)個別交渉における値引きが多様化している商品

  • 一般機器、金属製品等の一部

(c)特売頻度が増加する等の形で価格下落が進んでいる商品

  • 加工食品、衣料品等の一部

次回基準改定では、こうした商品に限り、実勢価格の動向を把握するための次善的対応として、「平均価格」(月間取引金額/月間取引数量)を調査することとしています。なお、その際には、物価指数の大前提である「品質一定の条件」を損なうことがないよう、(a)できる限り商品を特定する、(b)取引の相手先による価格の違いが無視し得ない場合は取引の相手先を固定する等、個々の商品の取引実態をしっかり見極めながら、慎重に作業を進めていきたいと考えています(2−25参照)。

2−25. 今回の見直しでは、一部商品について平均価格を導入するということですが、具体的には、どのような商品に導入するのですか。平均価格は、「品質一定の価格を調査する」という物価指数の原則に反することはありませんか。

2−24でみたように、商品の多様化や個々の商品における価格の多様化(一物多価)が一段と進む中で、商品やその取引条件(取引の相手先や取引数量等)を細かく指定する従来型の調査方法では、実勢価格の動向を的確に把握することが難しいケースが増えてきています。こうした状況に対処するため、日本銀行では、2002年12月の卸売物価指数の次回基準改定に向けて、一部の商品について、品質一定の条件を損なわない範囲内で平均価格(月間取引金額/月間取引数量)を導入する予定です。

ただし、物価指数の大前提である「品質一定」の条件を損なわないためには、平均価格の採用基準を厳格に定義しておく必要があります。例えば、価格水準が違う複数の商品を平均した場合、今月は元々価格水準が高い商品の取扱いが多かった(少なかった)という技術的な要因によって、平均価格が上昇(下落)してしまいます。また、同じ商品であっっても、価格水準が違う複数の取引先向けの価格を平均した場合には、同様の問題が発生します。

こうした問題(品質<商品や取引先>の違いによる価格の振れ)を回避するため、日本銀行では、以下のような基準に従って、個々の商品毎に平均価格の導入の是非を判断していく方針です。

(a) 取引相手先の違いによる価格の違いが存在する場合。

  • 「商品」と「取引相手先」の双方を固定した平均価格

(b) 取引相手先の違いによる価格の違いを無視し得る場合。

  • 「商品」を固定した平均価格

(c) 商品の個別性が強いため代表的商品の特定が困難で、かつ取引相手先の違いによる価格の違いが存在する場合。

  • 「機能・用途が類似した幾つかの商品」と「取引相手先」の双方を固定した平均価格

(d) 商品の個別性が強いため代表的商品の特定が困難で、かつ取引相手先の違いによる価格の違いを無視し得る場合。

  • 「機能・用途が類似した幾つかの商品」を固定した平均価格

図表2は、上記基準に従って、幾つかの商品について試験的に調査した平均価格の事例です(図表2−1は上記<a>のケース、図表2−2が<d>のケースに該当します)。いずれも、月次ベースでは多少の振れを伴っていますが、数か月を均してみると、ジリジリと値下がりが続いている姿が明確に見受けられます。

図表2 商品等を固定した平均価格の実例

(1)加工食品(商品および取引先業態固定)

  • 2000年から2001年について、商品A、商品B、商品Cの実際の価格推移を示したグラフ。詳細は本文の通り。

(2)一般機器(類似商品固定)

  • 2000年から2001年について、商品A、商品Bの実際の価格推移を示したグラフ。詳細は本文の通り。

なお、どの品目についてどのような定義の平均価格を採用したか等の情報については、基準改定にあわせて別途作成・公表予定の「調査対象商品一覧」の中で、具体的に開示していきたいと考えています。

2−26. 参考指数として作成を予定している「連鎖指数」とはどのような指数なのですか。現在の指数(ラスパイレス指数)に比べどのようなメリットがあるのですか。

現行のラスパイレス指数は、ウエイトを基準時に固定(更新は5年毎の基準改定時に実施)しているため、(a)基準時から時間が経過するにつれ、各商品のウエイトと実際の取引シェアが乖離し、指数の精度が低下するという弱点を抱えています(詳細は1−6をご覧ください)。また、(b)個々の商品の総平均指数への影響度は、その商品の指数に基準時ウエイトを乗じた「加重指数」の大きさで決まってくるため、ある商品の指数水準が大幅に低下(上昇)した場合、同商品の価格変動が総平均指数に与える影響度が低下(上昇)する、といった問題もあります。

一方、連鎖指数は、毎期毎期ウエイトを更新したうえで、前期に対する今期の指数(前期=100とした指数)を作成し、基準時以降、そのようにして作成された指数を掛け合わせることによって作成される指数です。言い換えれば、連鎖指数を用いれば、基準時以降のウエイトの変化を指数に反映することができます。また、個々の指数水準の違いにより、総平均指数への影響度が変わるという問題も回避できます(この点については、簡単な仮設例を後述しています)。

このため、日本銀行では、2002年12月の卸売物価指数の基準改定(企業物価指数への移行)にあわせて、現行のラスパイレス指数を補完する参考指数として、国内企業物価指数(現在の国内卸売物価指数)について、ウエイトを毎年更新する連鎖指数を、月次ベースで作成する予定です。これは、できるだけ最近時に近いウエイトで月々の物価変動を捉えることが、急速に変化している経済の実態を推し測るうえで有用であるとの考え方によるものです。詳細は「卸売物価指数の見直しに関する最終案」をご覧ください。

下表は、上記(b)の問題を簡単な数値例でみたものです(<a>の問題は直感的に分かり易いためここでは説明を省略します<ウエイト更新の効果は1−6でみた基準改定の効果と同様です>)。

仮設例(簡単化のため商品A、Bのウエイトは等しいと仮定)

  • 図表

例えば、商品Aと商品Bの2つから成る物価指数において、商品Aの価格が横ばい、商品Bが毎年20%づつ低下するケース(簡単化のため両商品のウエイトは等しいとする)を考えてみましょう。ラスパイレス指数の場合は、個々の商品の変化率が変わらないにもかかわらず、(a)全体の価格下落率が、1年目10.0%、2年目8.9%、3年目7.8%といった形で次第に縮小する一方、(b) 基準改定が行われると、各指数の水準が100に戻ることで再び下落率が10.0%に拡大する、という特徴があります。これは、商品Bの指数レベルが低下するにつれ、指数全体に対する影響度が小さくなっていくためです。

一方、連鎖指数の場合は、何年目になっても、商品Bの前期に対する今期の指数は80、両商品のウエイトは等しい(かつ不変)としているため、全体でみた前期に対する今期の指数も90で不変です。従って、基準年を100とした全体の指数は、1年目が90.0(=100.0×90.0)、2年目が81.0(=90.0×90.0)、3年目が72.9(=81.0×90.0)となり、商品Bのレベルが基準年から離れるにつれ低下したとしても(また基準改定により指数レベルが100に戻ったとしても)、各年の下落率は10.0%で変わりません。

2−27. 最近になって、IT関連の新商品が急速に伸びてきていますが、今回の見直しでは、そうした商品の価格を、新たにどの程度捉えていくのですか。

物価指数の精度を保つには、新商品を迅速に指数に取り込むことが不可欠です。現在の卸売物価指数でも、IT関連商品について、95年当時に取引額が十分に大きくなっていたものや、急速に成長していたものを最大限取り込んで来ました。

しかし、この分野では技術の進歩が目覚しく、僅か数年の間に新商品がどんどん台頭してきているのも事実です。こうした観点から、日本銀行では、2002年12月に実施予定の次回基準改定に向けて、目下、新規採用品目の充実に努力しており、IT関連品目の拡充はその中の重要なポイントの一つとなっています。具体的には、半導体製造装置、携帯情報端末、光ファイバー等の採用を検討しています。また、統計ユーザーの利用ニーズにも配慮し、「電子計算機本体」を「パソコン」と「汎用コンピュータ・サーバ」に分割する、「集積回路」を「メモリ」と「ロジック」等に分割する、「入出力装置」を「スキャナ(読取装置)」「ディスプレイ(表示装置)」「プリンタ(印刷装置)」等に分割する、「ビデオカメラ」から「デジタルカメラ」を独立させるなど、既存の品目を細分化ないし充実することも考えています。

また、指数精度との関係では、調査対象を新しい商品に入れ替える際の品質調整を的確に行うことも重要です。とくに、IT関連商品の場合、他の商品に比べて、プロダクト・サイクルが短く、かつ技術進歩に伴う品質の向上が著しいケースが多いため、品質調整の適否が指数精度に深く関係しています。

しかし、プロダクト・サイクルが短く技術革新が著しいといったIT関連商品の特徴は、同時に、オーバーラップ法やコスト評価法等の従来の品質調整手法(詳細は2−9をご覧ください)の適用が難しい商品が少なくないことを意味しています。日本銀行では、こうした問題に対処するため、ヘドニック法をはじめとした各種手法を駆使しながら、積極的に品質調整に取り組んでいます。例えば、2001年1月から市販のPOSデータを用いて、デジタルカメラ、ビデオカメラの2商品に新たにヘドニック法の適用を開始した(パソコンについては従来より同法を適用しています)ほか、ここ数年市場シェアが拡大しているパソコンサーバ等についても、品質調整手法の研究を深めていきたいと考えています。

2−28. 今回の見直しでは、IT関連以外にどのような商品が新たに取り込まれるのでしょうか。

新規採用品目の拡充に当っては、2−27でみたIT関連商品のほか、(a)流通合理化や内外価格差是正の動きを示す品目、および(b)国際分業の更なる進展を示す品目の充実にも重点を置いています。

やや具体的に説明しますと、(a)の観点では、ここ数年、海外のコストの安い場所で安価に製造され、日本に輸入される動きが拡大しています。また、その過程では、卸売業を通さない製造小売一体型の流通手法も取り入れられてきています。今回の見直しでは、こうした動きを反映させようと考えています。具体的には、例えば、ここ数年で中国等からの輸入が急増している繊維品(衣料品)、食料品(参考指数として作成している生鮮食品を含む)の調査価格数の拡充や、分類の充実を行っていく方針です。その一方で、海外への生産拠点の移転が進み、国内生産が大幅に縮小している品目については、整理・統合を考えていきます。

また、(b)の観点では、最近は一つの産業内において、製品を完成させるために各国が特色を活かしながら分担して生産する動きが拡大しています。日本では付加価値の高い部品を生産して輸出する一方で、完成品や付加価値の低い部品を輸入することが盛んです。今回の見直しにおいては、こうした傾向を念頭に置いて採用品目の充実を図る方針です。具体的には、自動車部品、航空機部品等の機械部品の輸出や、録画・再生装置等の耐久消費財の輸入を中心に、採用品目を拡充・細分化していきたいと考えています。IT関連の項でみた、集積回路や入出力装置の品目の細分化は、こうした流れの一環でもあります。

また、上記とは別に、規制緩和の動きもさらに活発になっていますので、その物価に及ぼす影響も最大限取り込んでいきたいと考えています。このため、今後一段の規制緩和が予想されている電力・都市ガスの分野についても、調査内容の充実に取り組んでいます。なお、新指数での採用品目や分類編成については、2002年12月の基準改定を待つことなく、内容が固まった段階で逸早く公表する方針です。

2−29. 以前は、毎月発表される月間指数以外に、上旬と中旬にも卸売物価指数が発表されていたと思いますが、旬ベースの指数はもう公表しなくなったのですか。

卸売物価指数では、翌月上旬に公表している「月間指数」のほかに、翌旬央のタイミングで「旬間指数(上・中旬指数)」を公表してきましたが、旬間指数については、以下の理由から、2001年12月中旬分をもって作成・公表を廃止しています。なお、同時に、毎月の価格調査の方法も、これまでの「上・中・下旬別に3つの価格を調査する」方法から、「月間価格1つを調査する」方法に簡素化し、報告者負担の軽減を図っています。

(a)産業構造の高度化に伴い旬間指数の役割が低下したこと

旬間指数作成開始当初は、対象品目の大半が市況商品であったため、旬毎の価格調査にも大きな意義がありましたが、戦後の高度成長期以降の産業構造の高度化とともに市況商品のウエイトが低下したため、旬間指数を作成することの意義は薄れてきています。また、実際に旬毎の調査を実施していたのは、価格の月中変動が大きい一部の市況商品(全品目数の7%程度<2001年時点>)に限られており、月間指数の速報値としての精度も小さなものに止まっていたのが実情です。

(b)実際のユーザーニーズも僅少で、報告者負担を考えると思い切ってスクラップすることが適当と判断されたこと

統計メーカーにとっては、有用性の低下した統計をスクラップし、報告者の皆様のご負担を必要最小限に止める努力が不可欠です。こうした観点から、日本銀行では、2001年5月に旬間指数の廃止を提案し、広くユーザーの皆様のご意見を伺ったところ、大半の方からご賛同を頂いた経緯があります。詳しくは、「卸売物価指数の見直し方針」、および「卸売物価指数の見直しに関する最終案」をご覧ください。