質問日本銀行は、物価をみるときに、何を判断材料にしていますか?
教えて!にちぎん
日本銀行の景気判断と見通しについて詳細に説明している「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」の「背景説明」を例にして、景気の具体的な判断材料について見てみます。
「背景説明」の「2.物価の現状と見通し」のパートでは、物価に関する様々な統計について注目しています。物価とは、財(モノ)やサービスの価格を総体的に捉えたものですが、これは、経済の実態を映す「鏡」や「体温計」にもたとえられます。すなわち、ある財やサービスの価格は、基本的には、その財やサービスに対する需要と供給のバランスを反映するためです。またその一方で、こうした物価の変動自体が経済活動に大きな影響を及ぼします。
ただし、ひとくちに物価といっても、それが企業の間で行われる取引か、企業と個人の間の取引かにより、同じ財やサービスでもいくつもの価格が存在します。例えば、消費者が購入する財やサービスの物価としては「消費者物価指数<CPI>」があります。また、企業間で取引される財の物価としては「企業物価指数<CGPI>」があります。さらに、企業間で取引されるサービスの物価には「企業向けサービス価格指数<SPPI>」があります。 こうした物価指数に加えて、国内外の商品市況(原油、非鉄金属、農林水産物などの市場での取引価格等)などの様々な動向に注意を払いながら、総合的に物価の動きを分析しています。
日本銀行では、2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するという約束を示しました。そのため、特に「消費者物価指数<CPI>」の動向を注視しています。もっとも、消費者物価は、様々な要因の影響を受けて変動します。このため、金融政策の運営にあたっては、様々な一時的な撹乱要因の影響を取り除き、基調的な変動を的確に把握する必要があります。そこで、総務省統計局から公表されている「総合除く生鮮食品」、「総合除く生鮮食品・エネルギー」に加えて、日本銀行では、分析データ「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」として「上昇・下落品目比率」、「刈込平均値」、「最頻値」、「加重中央値」を毎月公表し、消費者物価の基調的な変動を分析しています。
また、分析をする際には、消費税率変更による物価への影響について取り除いた方が良い場合もあります。その場合は、消費税率引き上げの直接的な影響について取り除いたベースで分析を行います(詳しくは分析データ「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」の解説・関連資料を参照)。
なお、先行きの物価動向を考えるに当たっては、現存する生産設備や生産に従事可能な人口の動き等によって決まる潜在的な供給能力と、最終需要との関係を表わす「需給ギャップ(詳細は分析データ「需給ギャップと潜在成長率」を参照)」は重要な指標の一つです。また、家計や企業などの先行きの物価に対する予想物価上昇率の動向も重要です。この他にも、為替レートや海外商品市況の変化、賃金動向、企業の価格設定行動の変化などが物価に与える影響も十分考慮することが必要です。