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Bank of Japan Research Laboratory Series
日銀リサーチラボ・シリーズ

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日銀リサーチラボは、日本銀行職員による様々な専門分野における調査・研究活動を幅広い読者を対象に分かり易く解説することを目的としています。日銀リサーチラボの内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではありません。

「物価変動のコスト・ベネフィットを巡る議論の潮流」

杉岡優、伊藤雄一郎、開発壮平、高富康介

No.24-J-4:2024年9月24日

物価変動が社会厚生に及ぼす影響は、古くから経済学の主要な研究テーマである。本稿では、物価変動のコスト・ベネフィットや、そこから導き出される望ましいインフレ率を巡る議論の潮流について、近年の研究事例も踏まえて整理を行った。望ましいインフレ率を巡っては、1990年代は、貨幣保有を前提に、インフレのコストを …

「人口動態と家計の貯蓄・投資動向」

片桐満、小田剛正、小川泰尭、篠原武史、須藤直

No.24-J-3:2024年7月12日

人口動態は、家計の貯蓄・投資行動の変化を通じて、自然利子率だけでなく、貨幣と実物資産、国内資産と海外資産といったマクロの資産構成にも影響を及ぼすと考えられる。本稿では、少子高齢化がもたらすこれらのマクロ経済的な帰結について、世代重複モデルにもとづく分析結果を紹介しつつ、既存研究の考え方を整理する …

わが国における賃金・物価上昇率の連関

上野陽一

No.24-J-2:2024年6月28日

今次局面では、(1)コストプッシュによる物価上昇と、(2)賃金と物価の好循環の強まり、という変化が生じており、物価の基調を捉えるうえでは(2)の動きの抽出が重要である。本稿では、こうした考えに基づき、賃金と物価の基調的な動きを抽出するとともに、両者の連関を定量的に分析したUeno(2024)の概要を紹介する。主な分析結果は …

産業特有のトレンドの経済成長への含意
―産業連関ネットワークを考慮したモデルによる接近―

代田豊一郎、土田悟司

No.24-J-1:2024年6月6日

個別産業の栄枯盛衰は、長期的な経済成長の主要因なのだろうか?1950年代以降のデータを用いて分析を行ったShirota and Tsuchida(2024)によると、結論は国によって異なる。新陳代謝が活発な米国では、個別産業の栄枯盛衰こそ経済成長の主要因である。一方、日本では …

留保賃金は上がっているのか?
―わが国パート労働市場における分析―

古川角歩

No.23-J-3:2023年10月12日

「留保賃金」とは、家計がその水準以上の賃金ならば就職し、それより低ければ非就業を選択する基準となる賃金のことである。留保賃金は、労働需給の決定メカニズムについて理解を深めるうえで重要な概念である。本稿では、わが国パート労働市場における留保賃金を推計し、その含意について分析した古川(2023)の概要を紹介 …

「店頭デリバティブ市場改革が金利スワップ取引価格に及ぼした影響」

曽根泰平、小田剛正、宮川大介

No.23-J-2:2023年8月22日

2000年代後半に発生した世界金融危機の教訓を踏まえ、店頭デリバティブ市場における規制の枠組みが国際的に検討され、わが国でも、清算集中の義務化や証拠金規制の導入が段階的に進められてきた。本稿では、わが国の店頭デリバティブ(円金利スワップ)取引の明細データを用いて、こうした規制の導入が、取引価格の異質性 …

求人広告ビッグデータを用いた正社員労働市場の分析

古川角歩、法眼吉彦、城戸陽介

No.23-J-1:2023年6月1日

労働市場は、多様な側面を持ち、単一の統計やデータでその全貌を理解することは難しい。本稿では、オンライン求人サイトに掲載された約580万件の正社員求人広告情報を使用し、わが国正社員労働市場の需給や賃金の動向について分析を行った古川・城戸・法眼(2023)の概要を紹介する。分析の結果 …

景況感は何に基づき形成されるのか:テキスト分析で探る景気ウォッチャーの着目点

三上朝晃、山縣広晃、中島上智

No.21-J-2:2021年12月20日

内閣府が実施する景気ウォッチャー調査では、毎月、景気判断のDIに加え、調査回答者(景気ウォッチャー)が景気判断の際に着目したポイントを示すコメント集を公表している。本稿では、このコメント集を題材として、最近注目されているテキスト分析手法の景気分析への活用例を紹介する。具体的には …

インフレ予想の計測手法の展開:市場ベースのインフレ予想とインフレ予想の期間構造を中心に

安達孔、平木一浩

No.21-J-1:2021年6月25日

インフレ予想は直接観察できないため、サーベイ調査や、物価連動国債などの物価指数に元本等が連動する金融資産の価格をもとに把握されてきたほか、これらの指標から基調的なインフレ予想やその期間構造を推計する手法の開発も進んでいる。本稿では、市場ベースのインフレ予想を分析した …

IFRSの適用とNon-GAAP指標の開示
―― 日本企業の経験から

柴崎雄大、豊蔵力

No.19-J-3:2019年12月25日

Non-GAAP指標とは、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」(Generally Accepted Accounting Principles:GAAP)による定めがない指標である。企業が適用する会計基準は、当該企業によるNon-GAAP指標の開示行動にどのような影響を与え得るのか。国際会計基準審議会(IASB)が財務業績計算書等の表示を改善するプロジェクトに取り組んでいるいま、この問いに答えることは重要である。本稿では、 …

中央銀行がデジタル通貨を発行する場合に法的に何が論点になりうるのか: 「中央銀行デジタル通貨に関する法律問題研究会」報告書の概要

林健司、高野裕幸、千葉誠、高本泰弘

No.19-J-2:2019年11月29日

本稿では、日本銀行金融研究所が事務局を務めた「中央銀行デジタル通貨に関する法律問題研究会」報告書を紹介する。本報告書では、わが国における中央銀行デジタル通貨(central bank digital currency: CBDC)を巡る主な法的論点の洗い出しおよび検討を行った。まず、検討の前提として、CBDCの発行形態を具体的に想定し、4つモデルを置いたうえで、 …

インフレのコストとベネフィット:日米を事例としたモデル分析

嶺山友秀、平田渉、西崎健司

No.19-J-1:2019年7月9日

インフレのコストとベネフィットは、貨幣経済学における主要な研究テーマの一つである。本稿では、こうしたインフレのコストとベネフィットに影響を与える代表的要因を組み込んだニューケインジアン・モデルを用いて、日本と米国について、インフレと家計の経済的な充足度として表現される社会厚生の関係を分析した …

投資判断におけるアルゴリズム・AIの利用と法的責任

鹿島みかり、関口健太、千葉誠

No.18-J-5:2018年12月5日

本稿では、日本銀行金融研究所が事務局を務めた「アルゴリズム・AIの利用を巡る法律問題研究会」報告書(「投資判断におけるアルゴリズム・AIの利用と法的責任」)を紹介する。 同報告書は、アルゴリズム・AIの利用により投資判断が自動化したり、ブラックボックス化したりする場合に生じうる法的論点に焦点を …

失われた賃金インフレ?:賃金の下方硬直性と自然失業率の推計

岩崎雄斗、武藤一郎、新谷元嗣

No.18-J-4:2018年9月25日

近年、日本を含む先進各国は、失業率の低下の割に、賃金インフレ率が目立って上昇しない現象(失われた賃金インフレ)を経験した。本研究では、その背景の一つとして、不況期に生じうる賃金の下方硬直性が賃金インフレ率の失業率変動に対する反応を低下させた可能性を検証した。具体的には、上下非対称な賃金調整コストを …

新たな事業形態の登場と法制度の対応について:ライドシェア・サービスに関する労働法上の論点を中心に

杉浦志織

No.18-J-3:2018年6月14日

近年、シェアリング・エコノミーと呼ばれる新たな事業形態が急速に発展している。中でも、ライドシェアは、シェアリング・エコノミーの中核を占めており、市場規模が拡大している。これに伴い、欧州や米国では、ライドシェアに従事するドライバーが労働法の適用対象となる「労働者」と位置付けられるのか否かについて活発 …

わが国の自然利子率の決定要因―DSGEモデルとOGモデルによる接近―

須藤直、岡崎陽介、瀧塚寧孝

No.18-J-2:2018年6月13日

自然利子率は、直接観察できないため、様々な手法による推計を基に総合的に判断することが必要である。本稿は、構造型アプローチを用いて自然利子率を分析した岡崎・須藤(2018)と須藤・瀧塚(2018)の結果を基に、自然利子率の動向や変動要因、先行きの自然利子率への人口動態要因の影響について整理する。これら構造型アプロ …

証券決済制度と分散台帳技術

関口健太、千葉誠、鹿島みかり

No.18-J-1:2018年2月28日

近年、耐障害性やコスト低減等のメリットをもたらす可能性から、様々な分野において分散台帳技術が注目を浴びている。証券取引の分野への同技術の導入を展望する場合には、振替証券の譲渡にかかる効力要件等を規定している社債、株式等の振替に関する法律との関係について検討することが、証券決済の安定性確保の観点から …

P2Pレンディングの仕組みと投資家保護の在り方:英米日の法律構成の比較を踏まえて

左光敦

No.17-J-2:2017年9月28日

P2Pレンディングとは、銀行等の金融機関を介さず、貸手が借手に、比較的小規模の、個人・中小企業向け融資をインターネット経由で行う、新しい金融仲介の仕組みである。P2Pレンディングは、2005年に英国業者がサービスを提供して以来、英・米・中において、急速に融資残高が増加している。本稿では、P2Pレンディングの仕組みと…

わが国家計の資産選択行動の背景:日米アンケート調査を用いた考察

伊藤雄一郎、瀧塚寧孝、藤原茂章

No.17-J-1:2017年6月22日

わが国家計の主要な資産運用先は長期間にわたり現預金となっている。こうした家計の慎重な投資姿勢の背景には、何が影響しているのだろうか。家計行動のメカニズムを探ることは、金融政策の影響を検討する上でも、重要な論点である。本稿では、金融行動に関する日米のアンケート調査を用いて、家計の資産選択行動を考察した…

国債市場のネットワーク分析とシステミックリスクへの応用

崎山登志之、山田哲也

No.16-J-9:2016年12月9日

量的・質的緩和(QQE)導入以降、国債の需給がタイト化する中で、国債市場の流動性が注目されている。本稿では、「日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)」の国債取引データを活用して、QQE 導入以降の国債市場の構造変化と、金利急上昇時(2003年VaRショック時とQQE 導入直後)の特徴を...

わが国の国債先物の日中市場流動性

土田直司、吉羽要直、渡部敏明

No.16-J-8:2016年10月28日

日中取引データを用いて国債先物市場の流動性を分析したTsuchida, Watanabe, and Yoshiba (2016) を紹介する。まず、市場流動性を4つの評価軸で捉え、経済指標や金融政策の公表が市場流動性を概ね引き下げることを示す。次に、市場流動性指標のショックに対する持続性は、量的・...

保証に関する規律と多様な人的信用補完(金融取引の多様化を巡る法律問題研究会の報告書(4))

杉村和俊、板谷優、別所昌樹

No.16-J-7:2016年9月16日

金融取引において、保証と同じような機能を果たしうる取引は、様々な法律構成を用いて実現することができる。このため、保証に関する規律が、他の法律構成を採用した取引に対しても適用されるか否かということが問題となる。...

担保の再利用規制の射程(金融取引の多様化を巡る法律問題研究会の報告書(3))

杉村和俊、板谷優、別所昌樹

No.16-J-6:2016年9月14日

平成28年に導入される非清算店頭デリバティブ取引に対する証拠金規制のなかでは、顧客資産の保護等の観点から、担保の一種である当初証拠金として差し入れられた有価証券等の再利用を認めないとの規制が設けられる。...

銀行業と「為替取引」:銀行規制の適用範囲のあり方(金融取引の多様化を巡る法律問題研究会の報告書(2))

杉村和俊、板谷優、別所昌樹

No.16-J-5:2016年9月12日

わが国では、為替取引を無免許・無登録で営むと刑罰が科される。為替取引の定義については明確な解釈が確立していないため、革新的な決済サービスを開発しようとすることへの委縮効果が生じかねない。...

利息上限規制の適用範囲のあり方(金融取引の多様化を巡る法律問題研究会の報告書(1))

杉村和俊、板谷優、別所昌樹

No.16-J-4:2016年9月7日

利息の上限を規制する法令(利息上限規制)の規定をみると、「元本使用の対価」ということができる「利息」(実質的な意味での利息)以外にも、各種手数料など、多様なものが規制対象に含まれうる文言となっている。これは、規制の適用を免れるのを防止するうえでは有効なものと考えられるが...

ライフサイクル経済における最適インフレ率

小田剛正

No.16-J-3:2016年7月28日

現在、主要先進国の金融政策運営における目標インフレ率は2%程度である。これに対して、理論的な立場から、長期的に最適なインフレ率はマイナスまたは0%であるといった主張がなされてきた。例えば、貨幣を取り入れた多くの理論モデルでは、貨幣保有の限界効用(機会費用である名目金利に一致)をゼロにする金融政策...

わが国の長期失業者の現状

永沼早央梨、宇野洋輔

No.16-J-2:2016年3月1日

わが国の失業率は、歴史的にみても低い水準まで低下しているものの、長期失業者の減少テンポは緩やかである。わが国の長期失業者は、米国と違い、「若年層」(20~40歳代)の「男性」に偏っている。これは、90年代以降、...

伝統的・非伝統的金融政策ショックの識別—潜在閾値モデルを用いた実証分析のアップデート—

木村武、中島上智

No.16-J-1:2016年2月23日

主要先進国が導入した非伝統的金融政策の効果を巡って、様々な研究が報告されているが、経済を動かす多くの要因の中から金融政策ショックを正しく識別することは簡単ではない。特に、過去数四半期間、エネルギー価格の大幅な下落や海外経済成長率の下振れなどから...

量的・質的金融緩和と長期金利:国債の「純供給」残高と満期構成を通じた効果

福永一郎、加藤直也

No.15-J-7:2015年12月11日

各国で中央銀行による大規模な国債買入れが行われている中、国債市場の需給構造と長期金利の関係について、理論・実証の両面で研究が進められている。本稿では、日本国債の保有者や満期構成の変化が金利の期間構造やリスク・プレミアムに与える影響について...

「証券なき証券」を巡る法制度のあり方について

鈴木淳人

No.15-J-6:2015年11月10日

近年、わが国では電子的記録に基づく権利に関する法制度の整備が進んでおり、紙の証券を前提としてきた法律論は見直しや修正を迫られている。また、国際的にも、先般の金融危機を機に顧客資産保護に対する関心が高まっている。例えば、証券会社の倒産時に、振替証券の売買を委託した顧客は保護される必要があるが...

家計のインフレ予想:期間構造と金融政策のアンカー効果

鎌田康一郎、中島上智

No.15-J-5:2015年9月30日

家計のインフレ予想の安定化は、中央銀行が物価の安定を達成するための政策の一つであり、それ故に、中央銀行には、インフレ予想の動態に関する深い理解が必要とされる。鎌田他(2015)は、家計を対象としたアンケート調査を分析し、...

マイナスのインフレ・リスク・プレミアム

今久保圭、中島上智

No.15-J-4:2015年7月9日

インフレ・リスク・プレミアムは、将来の物価変動にかかる不確実性を表す指標である。インフレ・リスク・プレミアムがプラスであれば物価の上振れ懸念が強く、マイナスであれば下振れ懸念が強いことを意味する。わが国のインフレ・リスク・プレミアムは...

均衡イールドカーブの概念と推移

今久保圭、小島治樹、中島上智

No.15-J-3:2015年5月1日

近年、先進国では短期金利の低下余地がなくなり、イールドカーブ全体に働きかける政策が主流となってきている。こうしたなか、短期の均衡実質金利と実際の実質金利とのギャップだけでは、金融環境の緩和度合いを評価することが...

金融危機後の景気回復はなぜ緩慢なのか:金融政策運営への含意に関する一考察

池田大輔、黒住卓司

No.15-J-2:2015年3月24日

先般の世界的金融危機に限らず、これまでの金融危機の歴史を振り返ると、危機後の景気回復は、通常の回復局面に比べて緩慢となっている。その背景には様々な要因が考えられるが、金融危機による企業の資金調達環境の悪化を通じた生産性の低迷等が指摘されている。そうしたもとで、危機後、緩慢な景気回復に陥らないように...

金融不均衡を察知せよ!:金融活動指標による金融不均衡の把握

中村康治、伊藤雄一郎

No.15-J-1:2015年3月19日

金融不均衡を放置しておくと、金融危機やそれに伴う急激な信用収縮といった問題に繋がりうる。こうした事態を引き起こさないためにも、いち早く金融不均衡を察知することが求められる。本稿では、金融不均衡を把握するために開発された『金融活動指標』について解説を行う。『金融活動指標』は...

わが国のマクロ的な賃金決定の特徴は何か?:賃金版ニューケインジアン・フィリップス曲線の日米比較

新谷 幸平、武藤 一郎

No.14-J-2:2014年12月1日

当論文では、わが国におけるマクロ的な賃金決定の特徴を把握するため、Gali(2011)が導出した「賃金版ニューケインジアン・フィリップス曲線(NKWPC)」を日米のデータを用いて推計した。NKWPCの枠組みでは、観察された賃金上昇率と失業率の関係を経済学的な概念に関連付けて解釈できる。分析を通じて...

中央銀行の情報発信と市場心理:2013年中の日米における2つのエピソードを巡って

鎌田 康一郎

No.14-J-1:2014年12月1日

証券の価格や変動は、市場参加者の確信(confidence)の程度に左右される。しかし、主流派マクロ経済学では、そうした考え方にあまり関心が払われてこなかった。鎌田・三浦(2014)は、この確信という概念に再び着目し、公的情報と私的情報からなる2重構造モデルを用いて、国債市場において群集行動が発生するメカニズムを...

「日銀リサーチラボ」の創刊にあたって